「危機突破解散」で始まった総選挙が終わった。ポピュリズムが受ける今日にあって、反核や反原発を掲げて「安倍政権を倒す」と豪語する野党の公約は裏づけが明確でない。

そもそも選挙直前に結成した新党に、議論して公約を練り上げる余裕はなく、代表の心にあった考えが大衆受けする字面に化けて出てきただけであろう。

一方で、日本人の好きな日替わりメニュー宜しく、安倍晋三政権に飽きて「支持しない」が「支持する」を上回ったとする世論調査もある。

しかし、日本国家の名誉回復と安全保障に尽力し、また世界に置ける日本を強く印象づけてきた安倍首相の実績は大きい。多くの困難を抱える国際社会で、首脳たちと何時でも胸襟を開いて話し合えるのは安倍氏をおいてほかにない。

長期政権で懸案の解決

独裁国家の大統領などが20年、30年在位するのはともかくとして、民主主義国でも米国の大統領は大体2期8年務めている。ドイツのアンゲラ・メルケル首相に至っては12年を過ぎ、16年も視野に入っている。

民主主義国ではないが、一応選挙を実施しているロシアのウラジーミル・プーチン大統領は通算12年の任期を来年迎えるが、その後も対抗馬がいないと言われる。中国も大体2期10年を踏襲してきたし、習近平政権は2期目どころか3期目の22年以降の続投も噂されている。

一方、日本の首相の在任期間は、昭和以降の48人の首相を見ると、平均2年弱である。そうした中で、安倍氏は在位約6年10か月で外国首脳と漸く互角の在位期間になりつつある。

第1期安倍政権も含めた6代の首相がほぼ1年ごとに代わり、日本人的感覚からは2期目の安倍政権は長いように感じられる。しかし、国益を阻害してきた1年ごとの政権に対比した時、2期目の安倍政権は、日本の国柄と安全に資するために必要な法案を多く成立させてきた。

1期目で教育基本法の改正、憲法改正の是非を問う国民投票法の制定、防衛庁の省への昇格、そして限定的な集団的自衛権行使の研究など、長期的な将来を見据えた施策を残したが、キャッチフレーズであった「戦後レジームからの脱却」の表看板とも言うべき靖国参拝は果たせなかった。

参議院議員選挙の惨敗、閣僚の不祥事に加え本人の体調悪化もあったが、慰安婦問題や南京事件などの歴史認識に対する米中韓の非難などから国民の支持率も低下し、「東京裁判史観の見直し」もできずじまいであった。

1期目の反省から2期目は世界を俯瞰する外交を展開し、世界のリーダーと誼を深め、臨機応変に会話できる人間関係の構築に尽力してきた。

そうした努力の結果、ドナルド・トランプ米国大統領とも、プーチン露大統領とも軽易に電話できるまでの関係を築き、G7サミットではトランプとメルケルの仲をとりもつ場面さえあったと仄聞する。

いまや、安倍首相はG7を牽引する存在であり、日本の歴代首相のなかでも希有な存在である。俯瞰外交で稼いだこの貴重な資源を活用して、当面する北朝鮮の核・ミサイル対処と拉致被害者の奪還、長期的には対中関係を改善して靖国参拝を果し、東京裁判史観から脱却する先鞭をつけてもらいたい。

米国保守派による歴史見直し

米国の保守主義運動は、フランクリン・ルーズヴェルト民主党政権によって構築された『ニューディール連合』に対抗する目的で始まったと指摘したのは、保守系シンクタンクであるヘリテージ財団のリー・エドワース博士である(以下本節は江崎道郎著『コミンテルンとルーズヴェルトの時限爆弾』を参照)。

ルーズヴェルトは大統領に就任すると直ちにソ連と国交を樹立し、反共を唱えるドイツや日本に対して敵対的な外交政策をとるようになる。

「強い日本はアジアの脅威であるばかりでなく、アメリカの権益を損なう存在」とみて、「弱い日本」政策を推進する。博士によると、現代米国の保守主義者にとってルーズヴェルトこそ最大の敵であったという。

他方で、「大陸国家(ロシアや中国)の膨張政策の防波堤として日本を活用すべきだ」とする「強い日本」政策を進めようとしたのが保守派の人たちである。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51396

>>2以降に続く)