■日本単独の独自制裁として「朝鮮総連破産申し立て」の声

米トランプ大統領の訪日中、日米両首脳からは北朝鮮に対する圧力強化がたびたび強調された。日米政府は大統領のアジア歴訪に合わせ、北朝鮮の金融機関を対象とした35の組織・個人の資産凍結の追加制裁措置を決定した。核・ミサイル開発の放棄を迫る日米が足並みをそろえて、北朝鮮への送金ルートを断つことを狙う。

河野太郎外相も国際社会に対して、国交を結ぶ国に断交を呼び掛けた。9月、米国での講演会で「160カ国以上の国が世界の脅威である北朝鮮と国交を結んでいるという事実を信じられるだろうか」と語った。

しかし日本政府の一連の制裁は、米国の決定に追随する傾向にあり、単独制裁とは言えない。北朝鮮の不正行為を告発している「アジア調査機構」加藤健代表は、「日本単独で実行可能な制裁は、朝鮮総連への破産申し立て」と、自身のSNSで主張する。

加藤氏は9月、中国英字紙サウスチャイナ・モーニングポストの取材に対して「彼らは(北朝鮮当局)日本の納税された資金を北朝鮮に送金し、ミサイルと核兵器を開発し、日本に向けている」と述べた。

朝鮮総連について説く、金昌烈(キム・チャンヨル)氏の『朝鮮総聯の大罪 許されざる、その人びと』(宝島社,2002)には、「北朝鮮の弾道ミサイルや核兵器は日本から入ってきた金でつくられていると言ってよい」と指摘している。

キム氏によると、90年代には預金総額2兆3750億円に及ぶ日本有数の信用組合に成長した「朝鮮銀行信用組合の人事権は、朝鮮総連にあった」と、暴露している。

しかし、バブル崩壊で各地の朝銀が次々と経営破綻し、朝銀の北朝鮮への不正送金疑惑が明るみになった。

北朝鮮問題に力を入れる安倍晋三首相は2015年2月、衆議院予算委員会で、90年代の朝銀信用組合の破綻について、逮捕者25人を出した組織の犯罪に起因すると答弁した。また「破綻を知りながら公的資金が入ることを前提に貸し出しを続ける不正融資」と指摘した。

引用すると、首相は「朝銀信組の破綻は(略)投資の失敗だけではなく、いわば不正融資であり、北朝鮮に金が渡るということを前提に貸し手側と借り手側が一体となっていたことだ」と述べている。

朝鮮総連は、「北朝鮮へ送金しているのではないか」との前出の加藤氏の投げかけについて、回答していない。代わりに、米朝平和維持管理センター(拠点・東京)の常任理事で、北朝鮮の非公認広報キム・ミョンチョル氏が、サウスチャイナモーニングポストの取材に応え、加藤氏の主張を否定した。

「(加藤氏の指摘する)資金は北朝鮮当局や朝鮮総連に渡っていない。核やミサイル開発にも投じられていない」「朝鮮総連は北朝鮮に送金できないだろう。なぜなら組織の経営権は日本政府に握られている。回答義務は日本側にある」と同紙に答えた。キム氏は、故金正日氏と親交の深い人物とされる。

(文・佐渡道世)