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 林芳正文部科学相は14日、大学設置・学校法人審議会(設置審)の答申を受けて学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)の獣医学部新設を認可した。国家戦略特区を活用して来年4月、52年ぶりに獣医学部が開設される。しかし、学園が新たな獣医師の需要を示すために設置審に提出したアンケート結果に対し、専門家が「統計学的な信頼性が不十分」との見方を示すなど、疑問と課題が残っている。【福永方人、伊澤拓也】

 「手続きに瑕疵(かし)はなかったと考えている」。認可を発表した14日の閣議後記者会見。林氏は安倍晋三首相の親友が理事長を務める加計学園が、特区の事業者に選ばれた経緯についてこう強調した。

 政府は2015年、地域限定で規制緩和する特区で獣医学部の新設を認める前提として「既存の獣医師養成ではない構想」「ライフサイエンスなど獣医師が新たに対応すべき具体的な需要がある」など4条件を閣議決定。加計学園がクリアしたと説明してきた。

 需要に関するアンケートは今年6月、大手予備校のグループ会社が学園の委託で実施した。獣医学部を新設する岡山理科大など学園系列3大学への求人データから、獣医学部の卒業生の採用が期待される47都道府県の動物病院や農協、医薬品メーカーなど4143事業所を対象とし、511事業所から回答を得た。回収率は12.3%だ。

 学園が特色に掲げる「創薬等の先端ライフサイエンス研究や地域における感染症対策」などの獣医師が必要かとの問いに対し、必要と答えた事業所は「現在」「将来的に」を合わせて38.8%。一方「どちらでもない」は57.5%だった。

 学園が育成する獣医師の将来的ニーズについては「極めて高い」「ある程度高い」との回答が、ライフサイエンス分野に関連する事業所では46.4%、医獣連携獣医分野の事業所では49.9%となった。ただし、卒業生を採用するかについては「ぜひ採用したい」はライフサイエンス分野で3.7%、医獣連携獣医分野で5.3%。「検討したい」も両分野で8%超にとどまり、「採用しない」はともに36%前後だった。

 企業のマーケティング調査に詳しい埼玉大経済学部の朴英元(パク・ヨンウォン)教授は統計学の観点から「系列大の求人データを使っていて対象の選定に恣意(しい)性があり、需要があるという結論ありきの調査に見える。統計学的な信頼性は十分ではない」と分析する。その上で「無回答の3632事業所は無関心か否定的な回答群と言え、実際の需要はアンケート結果より大幅に低くなる可能性がある」と指摘する。

 ◇実習や教員課題多く

 学園の計画は設置審の審査過程で問題点が修正されたとされるが、認可答申の際に8件の留意事項が付けられており、課題は多い。

 当初160人だった定員は実習を円滑にできるかが疑問視され、学園は140人に減らした。それでも全国の獣医学部では最多で、8月の第2次審査意見でも実習を1日3コマ8日間で実施することの妥当性について「不明な部分があり、計画全般を見直すこと」と是正意見が付いた。

 学園側は1日2コマに修正しつつ「学習効果が上がる」などと短期集中型の実習の利点を強調した。ただ、留意事項でも「定員の厳格な管理に努めること」など実習に半数の4件が集中した。文科省によると、実習に関しては反対する委員がいたが、多数決で認可答申が決まったという。

 「高齢層に偏りがみられる」と指摘された教員の年齢層も改善されたとは言い難い。学園は専任教員を当初の72人から75人に増やしたが、構成が変わり、1〜6年の学生がそろう「完成年度」の2023年度末に退職年齢の65歳以上となる割合は19・4%から25.3%と逆に悪化した。文科省によると、実習担当の平均年齢は若返ったが、その他の年齢層は上がったという。

 ◇手続きに疑念

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