文在寅(ムン・ジェイン)大統領と中国の習近平・国家主席は14日の首脳会談でいわゆる「4大原則」に合意したが、その中で特に注目すべきは第1項の「韓半島(朝鮮半島)での戦争は絶対に容認できない」という内容だ。これは韓国の大統領が同盟国である米国を念頭に、北朝鮮に対する軍事オプションを放棄するよう求めたものに他ならないからだ。

外交は国同士が互いに刃物を背中に隠した状態でやりとりする政治行為だ。ところがこの4大原則をみると、要するに最後の手段である刃物(軍事オプション)の使用を最初から放棄し、相手の善意に頼ろうとするいわば降伏宣言に等しい。刃物を放棄すれば降伏宣言になることは古今東西の歴史が証明している。

北朝鮮の核問題が対話や交渉といった外交的な方法で解決することは誰もが願っている。それを実現させるには、北朝鮮が外交的解決を最後まで拒否した場合、米国の圧倒的な軍事攻撃を受けるということを身をもって実感させ恐怖心を与えなければならない。ところが今回、韓国の大統領は米国に対して軍事オプションを放棄するよう堂々と要求した。

米国が軍事オプションのカードを手放してしまえば、北朝鮮にとっては恐れるものが何もなくなってしまい、譲歩する必要は一切感じなくなるだろう。このような状態で北朝鮮が交渉の場に出れば、まずは核保有を既成事実として主張し、その上で自分たちへの制裁を解除するよう強く求めてくるはずだ。

米国政府が軍事行動を検討するのはいわば最後の手段だ。中国という抜け穴がある限り、北朝鮮に対する制裁や圧力にはどうしても限界がある。しかも北朝鮮が核弾頭を搭載した大陸間弾道ミサイル(ICBM)を完成させるまで3カ月しか残っていないという。このような状況で米国が軍事行動を検討しなくなれば、北朝鮮に対して何の圧力をかけられるだろうか。

北朝鮮への軍事攻撃が決して簡単でないことは誰もが知っているが、それでもこのオプションを最初から排除する訳にはいかない。ところが遠い他国でもなく、しかも北朝鮮の核兵器による最大の被害者であり、さらには同盟国でもある国の大統領が米国に対して最後の手段を放棄するよう求めた。これは米国に「全てあきらめて北朝鮮の前で手を上げろ」と言っているようなものだ。

韓国政府が表明したいわゆる「3不」は全て米国と関係する内容となっているため、同盟国である米国としては神経質にならざるを得ない。ところがそれからわずか2カ月後、韓国は再び米国の戦略に正面から反対する立場を表明した。北朝鮮の核問題がどのような状況になったとしても、その解決の鍵は韓米同盟がいかに強固であるかにかかっている。しかし今の状況が続けば今後どうなるか予想もつかない。

米国としては軍事行動をせずに北朝鮮と適当な線で妥協することはさほど難しいことではないし、その可能性も全くないとはいえないだろう。北朝鮮の核武装が既成事実になったとしても、米国にまで飛んでくる大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発さえ北朝鮮に中止させれば、米国に大きな被害は及ばない。

しかし韓国にとっては大惨事だ。ところが今の韓国政府の行動は米国をそのような方向に押し出そうとするものだ。

文大統領は北京大学での講演で、中国を「高い山の頂」と表現し「韓国は小さな国だが、中堅国家として(中国の)夢と行動を共にできるだろう」と述べた。韓国の大統領が他国に行って「韓国は小さな国」と語るのは今回はじめて見た。

韓国は国土だけをみれば確かにさほど大きいわけではないが、5200万人の人口に国民所得は3万ドル(約340万円)近くに達しており、決して小さい国ともいえない。世界に韓国以上の国は米国、日本、英国、ドイツ、フランス、イタリアの6カ国しかない。

自分たちを低くして中国を高め、中国の協力を引きだそうと考えるのは中国について知らないから取れる行動だ。中国は周辺国を常に格下とみなして思い通り操り、踏みにじろうとする国だ。習近平・国家主席が掲げる「中国の夢」はそのような中国に再び立ち返ろうとするものに他ならない。


2017/12/16 08:50
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