なぜ朝鮮籍は減少したか

その後も、朝鮮半島南部の出身でありながら、日韓国交正常化後も相当数の人々が朝鮮籍を保持しきたのはなぜか。

理由は、政治的に北朝鮮を支持していたり、祖国の分断を肯定したくないとの心情から南北いずれへの帰属も表明しないという立場だったり、国籍にまったく無頓着だったりと理由は様々だ。
「朝鮮」は国籍にあらず

ちなみに日本政府は、外国人登録上の「韓国」表示は国籍を表すものと認めているが、北朝鮮とは国交がないために、「朝鮮」表示は国籍ではなく個人の背景を表す「記号」に過ぎない、との見解を示してきた。しかし、中国人と台湾人の国籍表示は「中国」で統一されており、これと同様に、「朝鮮」と「韓国」も何か他の表示に統一してはどうか、との意見が、一部の在日コリアンから提起されたこともある。

ただ前述したように、朝鮮籍の在日コリアンは現在では3万人程度とかなり少なくなっている。

革新政権下で変更が進む

朝鮮籍が減った理由は、韓国籍への変更と日本国籍への帰化が進んでいるからだ。とくに、金大中・廬武鉉の革新政権時代に韓国籍への変更が大きく増えたもようだ。「旅行証明書」の発給を受けて韓国旅行を体験した人々が、その楽しさにハマってしまったのだ。また海外でビジネスをする上で、北朝鮮よりは韓国のパスポートを持っていた方が有利なのは言うまでもない。

今や、朝鮮総連のメンバーも多くが韓国籍を取得しているほどだ。核・ミサイル開発を巡り北朝鮮に対する国際圧力が強まっている現状を踏まえれば、文在寅政権による訪問緩和を受け、今後もいっそう韓国籍への変更が進むものと思われる。

熱烈な北支持者も

しかしそれでも、当分は朝鮮籍がゼロになることはないだろう。朝鮮総連には少数ながら、北朝鮮を熱烈に支持する人々が残っているからだ。

ちなみに、北朝鮮に日本からの帰国運動で渡った家族や親戚がいるために、政治的な信条と関係なく、かの国を往来している在日コリアンもいる。ただ近年では、韓国籍であっても北朝鮮を訪問することはできる。そうした人々を排除していたら、朝鮮総連は組織としてもたなくなっているのだろう。

問題視されそうなのは、朝鮮籍にはごく一部ながら、北朝鮮当局の意を受け、韓国に対する地下工作に加担してきた人々がいることだ。