◆慰安婦像「有害だね」 サンフランシスコ市を現場ルポ 寄贈受け入れから1カ月

米西部カリフォルニア州のサンフランシスコ市が慰安婦像と碑文の寄贈受け入れを決定してから1カ月余。
市民らからは像への反対意見も聞かれるものの、徐々に認知が進み、その影響は着実に浸透し始めていた。
一方、公共物化するという市議会の決定を承認した市長、エドウィン・M・リー氏の急逝を受けて急遽行われることになった市長選では、像や大阪市との姉妹都市関係をめぐる一連の問題は、ホームレス問題など他の争点の影に埋もれようとしている。

「毎日来ているけど、何だか知らないなあ」。
慰安婦像と碑文が設置された、サンフランシスコの中華街にあるセント・メリーズ公園。昼食を取っていたソフトエンジニアのリラン・ウィンターさん(29)は、像についてこう話した。

碑文に日本政府が不適切とする表現が使われ、大阪市がサンフランシスコ市との姉妹都市関係解消を決めたことを説明すると、「有害だね」と首を振った。
多くは素通りするだけだが、時折像を見上げ、碑文を読む人の姿も見かける。

市内に住む庭師のマックス・ウィズダムさん(55)もその1人だった。
「日本の言い分も分かるよ。戦争だったんだ。他の国は決して日本を非難できない。過去は過去なのに。(像は)お粗末な教育だよ」。

一方で、像は州を超えて認知が広がっている。
韓国人の任才●(=火へんに赫)さん(44)は、留学先のアイダホ州から家族旅行の途中で立ち寄った。
日米韓の関係に及ぼす影響を懸念する声に「心配は分かる」としつつも、「日本が歴史を認めれば、このような像は必要なくなる」と話した。

像設置前から懸念されていた反日宣伝の拡大。
着実にその効果が表れる中、年明けから始まる市長選に向け、一連の問題への関心度は決して高まっていない。
今月12日のリー前市長の急逝に伴って市長代理に就いたロンドン・ブリード市議会議長は、会見で大阪市との関係についての言及を避け、すでに選挙への出馬を表明している候補らも、地元に密着したホームレス対策などをアピールするのに懸命となっている。

「(像のことは)すでに市議会で全員一致で決まったことで、すでに終わったという認識だ」(地元メディア記者)という雰囲気が大勢で争点化にはほど遠いうえ、仮に誰が新市長になろうとも、リー氏の決定を覆すのは難しいとの見方が支配的だ。
市役所取材を担当する別の地元記者も争点化は難しいとの認識を示しつつ、「強い意志があるのなら、日本人コミュニティーは新市長にロビー活動をすればいい。取り消されるのは異例だが、不可能なことではない」と指摘。

新市長への積極的な働きかけ次第では新たな可能性が開かれる余地があることを示唆した。
特別選挙は6月5日に行われる。市長の任期はリー氏の残り任期である2020年1月まで。

写真:米カリフォルニア州サンフランシスコ市の中華街にあるセントメリーズ公園に設置された慰安婦像。3人の女性が背中合わせに立ち、傍で慰安婦と見られる女性が見つめる構図となっている=2017年11月22日、米カリフォルニア州サンフ
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産経ニュース 2017/12/26(火) 9:03
http://www.sankei.com/world/news/171225/wor1712250057-n1.html