※続きです

オーストラリアの環境相は9月、国内の海岸でサメとの遭遇事故が増えていることと、クジラの生息数との因果関係を調べるように研究機関に指示した。
クジラが絶滅の危機にひんしている−とする根拠のない理由を反捕鯨の旗印に掲げるSSに対し、サメとの遭遇増加について、沿岸でクジラが増え、そのクジラを捕食するサメが増えたのが要因とみて調査に乗り出すという。
仮にクジラの増加が要因だと証明されれば、オーストラリアの反捕鯨の流れが揺らぐ可能性があり、SSの影響力低下は避けられないとみられる。

さらに、南極海などで調査捕鯨を行う日本鯨類研究所(東京)がSSなどを相手取り米連邦地裁に起こしていた訴訟で、昨年8月、SSとの間で、日本側の捕鯨船に対する妨害行為を永久に行わないことなどを柱とする合意に達したことも大きいとされる。
国際的な反捕鯨の流れに変化が生じてきていると言え、今回の中止宣言に少なからず影響を与えているのではないか、とみる関係者は少なくない。

■太地町長「伝統守る」

日本では、日本動物園水族館協会(JAZA)加盟の施設が太地の追い込み漁からイルカを入手しない決定を強いられるなど、SSのなりふり構わぬ国際世論操作に長年、押され続けてきた。
だが、最近は伝統的な漁を尊重しようとしてJAZAを脱退する施設が出てきたほか、太地町が情報交換などを進めるため、同じ追い込み漁を行うデンマーク自治領フェロー諸島のクラクスビークと姉妹都市協定の締結に踏み切るなど、反捕鯨の流れにくさびを打とうとする動きが出始めていた。

こうした状況下でSSの妨害中止宣言が飛び出したのだ。
とはいえ、SSが資金不足をアピールして、さらなる世界からの援助を得ようとしているだけで、妨害中止は一時的なものでしかないとする見方もささやかれる。

ワトソン容疑者は「クジラのために命をささげる」とたびたび公言しており、水産庁の担当者は「今までと違う方法での妨害を模索しているのかもしれず、警戒感は変わらない」との姿勢を崩していない。
太地町の三軒一高町長は「(SSの宣言を)意識することなく、太地は変わらず漁を続け、伝統を守っていく」と話している。

※以上です〆