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 最近北朝鮮の平壌では韓国の朝ドラ『逆流』が人気だ。このドラマは韓国でも始まってからまだ1カ月しかたっていないが、北朝鮮にも韓流ブームが根付いたためか、ソウルの最新ドラマを平壌で見られるまでのタイムラグが縮まっているようだ。金正恩(キム・ジョンウン)政権発足直後はその時間差が2週間ほどあったが、今は1週間もあれば十分だ。32ギガ程度の小さなマイクロSDカード1枚で高画質のドラマ12回分を記録することができる。中国から韓国ドラマをひそかに持ち込む業者は北朝鮮に入る際、口の中の上部にこのマイクロSDカードを貼り付けて検査を通り抜けているそうだ。このようにして北朝鮮に持ち込まれた韓国のドラマ、映画、歌などは北朝鮮全域に400カ所以上ある市場を通じて一瞬のうちに広まる。北朝鮮住民が持つパソコンはデスクトップとノートを合わせれば400万台と推測されている。これは6人に1台の計算だ。

 北朝鮮では住民の誰もが韓国ドラマを見ているので密告されることもない。かえって若者たちの間ではドラマのせりふや「当然だろ」といった韓国の流行語が普通に話され、仲間意識が強くなったりもする。北朝鮮のドラマは最初から決まり切ったストーリーになっているため、それとは完全に違った韓国ドラマに若い世代ほど夢中になるようだ。中には信頼できる仲間が集まって「ファンクラブ」を立ち上げ、最新版の確保に熱を上げるケースもあるという。

 昨年韓国に亡命した太永浩(テ・ヨンホ)元駐英北朝鮮公使は先日「北朝鮮住民は昼間は『金正恩・万歳』を叫ぶが、夜には布団をかぶってドラマを見ながら韓国を憧憬(しょうけい)している」と明らかにした。太氏も自らが亡命した理由の一つに「韓国ドラマと映画の視聴」を挙げている。今月初めに軍事境界線上にある板門店の共同警備区域(JSA)を越えて韓国に亡命した北朝鮮兵士も、意識が回復するとすぐ「韓国の歌を聴きたい」と口にした。今年亡命した北朝鮮住民は15人で昨年の5人よりも増えているが、その多くが「韓国のドラマを見て脱出を決意した」と語っている。これは韓流の影響力がそれだけ大きいことを示す証拠でもあるだろう。

 北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長は先日の党末端組織を集めた大会で「非社会主義の現象(韓流と市場経済の拡散)に対する壊滅戦を行え」と指示した。金正恩氏が党の末端の責任者を集めてこのような厳しい指示を下した背景には、それだけ韓流が脅威と認識されている実情があるのだろう。金正恩氏が核と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発によっていくら体制を結束させようとしても、韓流が普及すればそれだけ住民は大きく動揺しかねないと懸念しているのだ。

 北朝鮮は1990年代後半にも資本主義の風潮を意味する「黄色い風」を阻止するため、住民に対する処罰を厳しくしたが結果は思わしくなかった。今も非社会主義の現象を取り締まるべき幹部たちが、自分たちの押収した韓国ドラマを自ら見ているのが実情だ。自由の風はいかなる障壁があっても防ぐことはできない。金正恩氏の核の野望を止めるには制裁よりも「韓流」の方がむしろ効果的かもしれない。

アン・ヨンヒョン論説委員

ソース:朝鮮日報/朝鮮日報日本語版【萬物相】韓流と非社会主義壊滅戦
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