戦争を阻止する日韓の連携を

 文在寅大統領は昨年の光復節の演説で「韓国政府はすべてを懸けて戦争だけは防ぐ」と述べた。さらに米国を念頭に「誰も韓国の同意なく軍事行動を決定することはできない」と強調した。文大統領はその後も、「韓半島で再び戦争を起こしてはならない」と繰り返し主張している。

 一方、安倍晋三首相は「日本は『すべての選択肢がテーブルの上にある』とのトランプ大統領の立場を一貫して支持している。日米が100%共にあると力強く確認した」と言い切っている。米国が北朝鮮に軍事行動を取っても「100%ともにある」と取れる発言だ。

 朝鮮半島で戦争が起きれば、北朝鮮が韓国や日本に報復攻撃を掛ける可能性が高い。日本にとって第2次朝鮮戦争はもはや「対岸の火事」ではない。自らが甚大な被害を受ける可能性の高い「あってはならない戦争」だ。

 その意味で、文大統領の「韓国政府はすべてを懸けて戦争だけは防ぐ」との発言は、戦争を求めない日本の市民にとっても励ましの言葉だ。

 日本は少子高齢化が進み、今後、ますます国力は低下するだろう。韓国も今は日本より元気があるように見えるが、やがて同じ道をたどる可能性が高い。日韓両国ともアジアの「中堅国家」として生きていくしかない。また両国は安保軍事面では米国に依拠し経済的には中国との関係を深めている。国力が低下していく国が自国だけで米国に、中国に、もの申しても弱い。日韓はこの地域で生きていくためには、歴史問題など様々な問題を抱えながらも、うまく管理し、両国が声を合わせて米国にも中国にも主張していく方が効果的だ。

 今年は、小渕首相と金大中大統領が「日韓パートナー宣言」を発表して20年目の年だ。私たちが葛藤を乗り越え、新たなパートナーとして再出発する年にしたい。

 プロフィール
 1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。著書に『ソウル打令‐反日と嫌韓の谷間で‐』『なぜ北朝鮮は孤立するのか』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継』(岩波現代文庫)など。
(2018.01.01 民団新聞)