日韓関係最大の変数は「文在寅政権の支持率」

 それでは、韓国外交の今後はどのようになるのであろうか。最初の鍵は2月に開催される平昌冬季五輪を契機にして、南北対話が実現するかである。韓国政府はこの機会に大きな期待を寄せており、ここが当座の最大の注目ポイントとなるだろう。

 とは言えより大きな問題は、中国を巡る問題である。こう着状態にあったTHAAD問題で、韓国側に譲歩を見せ、巧みな「損きり」を行った中国は、スワップ協定延長と合わせて文在寅政権に大きな「貸し」を作った。中国にとっては北朝鮮問題も韓国に対する重要なカードとなっており、アメリカが保護主義的傾向を強める中、韓国国内の中国への期待は再び大きくなっている。この機会に中国が韓国への影響力をどこまで拡大させるかは短期的のみならず、中長期的にも重要になってくる。

 日韓関係については、最大の変数は「文在寅政権の支持率」であるかも知れない。周知のように韓国の歴代政権は自らの支持率が落ちると世論への抵抗力を失い、対日政策を強硬化させることを繰り返してきた。文在寅政権の対日関係の事実上の「放置」は、同政権の極めて高い支持率に支えられてきた部分があり、この支持率がどうなるかは注目である。

 しかしながら、より重要なことがある。それは現在の文在寅政権による対日関係の「放置」とも言える状態が、結果として、日本政府側の慎重な対処が必要な状況を作り出していることである。つまり、韓国政府の「放置」の結果、歴史認識問題の主導権は、朴槿恵政権時代の「政府」から再び「市民団体」に移りつつある。政府間合意に左右されず国境をこえて活動する彼らの動きにどう対峙するか。場合によっては、日本側の動きこそが大きな撹乱要因になる可能性もありそうだ。

【1/2追記】文中に「今年」とあった表現を「2017年」に修正しました。

(木村 幹)
文春オンライン