昨年日本政府は、韓国南部、釜山の総領事館前に慰安婦少女像が設置されたことに対抗し、駐韓日本大使を約三カ月間帰任させ、外交圧力をかけたことがある。

 しかし、少女像移転は実現しなかったことを忘れてはいけない。

 文在寅(ムンジェイン)大統領に直接会って、日本側の考え方を伝えることこそ、問題をこれ以上こじらせないための知恵といえる。

 文大統領は、日韓合意について「全て誤り」「日本が誠意を尽くして謝罪することが完全な解決と考える」と語っている。

 また韓国の閣僚が最近、新聞のインタビューで、日韓合意に基づき設立された財団の年内解散を望む考えを示した。これらの真意をきちんと説明してほしい。

 国と国との約束は当然守るべきだが、といって「合意は一ミリも動かさない」(菅義偉(すがよしひで)官房長官)というかたくなな姿勢はどうか。

 女性の人権についての問題は、国家間の合意だけでは解決できない精神的な面もある。

 安倍首相は、一五年の日韓合意の中で、慰安婦の女性たちに「日本国の首相として心からおわびと反省」を表明した。これを首脳会談の席で再確認してはどうか。

 双方の主張は平行線になるかもしれない。それでも今回の訪韓は、日韓首脳が信頼関係を回復するための一歩となるだろう。