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■日本への旅行客が伸びているのは「VIP」3カ国

こうした訪日客への地道なプロモーションの最前線にいるのが、日系の旅行会社といえるだろう。
JTBアジア・パシフィック本社はシンガポールにあり、アジア太平洋地域14の国と地域を統括する。
今回のマッタ・フェアでも日本パビリオンに大きなブースを構えていた。
シンガポールから、このフェアのために来馬したのが、同社の企画部マネージャー大倉恭子さんだ。

写真:JTBブースにて。一番左側が企画部マネージャー大倉恭子さん
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「以前は日本から海外に行く観光客が圧倒的に多かったのですが、それが近年逆転しました。
日本国民が海外旅行へ行かなくなる一方で、ASEAN諸国ではどこも国民の所得が上がり、旅行する人が増えているのです」と話す。

「近年特に日本への旅行客が伸びているのはVIPと呼ばれる3カ国。ベトナム、インドネシア、フィリピンですね。
どこも経済が強くなって国民の所得が伸びています。弊社ではこのほか、シンガポール、マレーシア、タイでの訪日旅行プロモーションに力を入れています」

そう。日本の人気はマレーシアだけではなく、アジア全体で増えている。
旅行オンラインサイトのアゴダの調査によれば、2018年の春節の旅行先で東京が初めてトップに選ばれるなど、日本旅行は今ブームなのである。

マレーシア人にはすでに日本に行ったことがあるという人が多い。
JNTOの統計でも、半数以上が日本への渡航経験がある。
そのため、マレーシア特有の現象として、いわゆる「ゴールデン・ルート」が飽きられてきているというのがある。

日本観光のゴールデン・ルートとは、東京、箱根、富士山、名古屋、京都、大阪など日本の主要観光都市を周る観光周遊ルートのこと。
旅行会社を訪問すると、よく聞かれるのが「もう東京や大阪、温泉や買い物は飽きた。何か新しい観光地はないのか」という意見だ。

そしてゴールデン・ルートに代わって一昨年あたりから、北海道や飛騨高山、中央アルプスなど、新しい旅行先がマレーシア人に注目されつつある。
なかでも北海道は直行便の運航開始もあり大人気。

南国のマレーシア人にとって雪はあこがれで、流氷ツアーやスノースポーツなどに人気が集まる。
また、合掌造りの写真で知られる白川郷も注目されている。

白川郷が人気になったのは、何といっても写真の力が大きい。
人々はあの合掌造りの写真をみて、「ここに行ってみたい」と即決する。

マッタ・フェアでお客様に対応していても、「あそこに行きたい」と白川郷の写真を指差すお客様は少なくないのだ。
実は、筆者もマレーシア人の友人に誘われて、2014年に生まれて初めて飛騨高山を観光したが、外国人の多さに驚いたことがある。

ちなみにこの友人は過去に10回以上来日しており、北海道や九州はそれぞれ1週間以上滞在している。
東京マラソンにも河口湖マラソンにも参加し、もはやありきたりな観光地では満足しなくなってきている。
求められているのは「新しい体験」、そして「SNSで友達に自慢できる写真」だ。

四国のお寺に宿泊してみたい人、北海道でスキーを楽しみたい人、誰にも知られていない新しい場所に行ってみたい人、地方のマラソン大会に参加したい人など、好みは千差万別になってきた。
ある旅行代理店では「ツアー客は物作りや農業体験など、個人旅行では行きにくい体験型の観光を希望しています」と明かす。

■出展者にも見られる変化

こうした消費者の嗜好に合わせ、出展者側にも変化が見られる。
「以前は出展していた大阪や北海道などが出展せず、一方で知名度が低い県の出展が増えている」と話す関係者もいる。
ゴールデン・ルートに代わる新しい体験を求める人々の出現で、地方にチャンスが回ってきたのだ。

マッタ・フェアではマレーシア人来訪者が日本地図をにらみながら、自作の旅程表を広げて、熱心に質問する姿がよく見られる。
また、マレーシアでは以前は中華系の旅行者ばかりだったのが、最近ではマレーシアの過半数占めるムスリム(イスラム教徒)の旅行者がじわじわ増えつつある。

写真:「ムスリムフレンドリー」をアピールする岡山市産業観光局・観光コンベンション推進課の片岡高明副主査
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※続きます