『差別と日本人』の辛さんの話を聞くと切なくなってくる
もういじめるのはやめようよ


辛 私、二十歳の時に「これからは本名で生きる」って両親に言ったんですよ。
父は黙ってた。しかし母親は、「おまえは日本の怖さを知らない」って言ったのね。(中略)
近所に警察官の家があったんですよ。そこの子がうちの兄貴をとってもいじめたの。
母がやめてくれって抗議しに行ったら、母もまたそこで罵倒されて、そのおうちの階段の
踊り場のところでしゃがんで泣いていたんですよ。
私、それを子どもの時ずうっと見てて、「絶対に勝たなきゃいかん!」と思ったのね。
 それで、二十歳になって自分の意志で生きるって決めて、それで頑張ったんですよ。
ある時、母に、「今は朝鮮人と名乗っても大丈夫だから、『お名前は?』って聞かれたら、
『シンです』って言いましょうね」って言ったら、その時から母親の体の具合がガーッと悪く
なって、薬を毎日飲まないと怖くていられなくなっちゃった。
 それで母に、「朝鮮人だからって差別する人は友だちじゃないでしょ」って言ったら、
「おまえはいいよ」って。「でも私の世代の人間が、あの人もダメ、この人もダメなんて
言ってたら、誰もいなくなっちゃう」って。(中略)

そうするともう家族は怯えてしまって・・・・・・。それで私は親と離れて暮らすようになった。
 それから、何年ぐらい経ってかな、母親が私に「日本名で暮らしていいか」って聞きに
来たんですよ。私は「うん、いいよ」って言った。もういくら頑張ってもダメだったから。
そしたら姉から電話がかかってきて「あんたが正義感を貫こうとするために、
家族がどんな思いをして生きてるか分かってるのか」って言われた。