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2018年5月15日
朝鮮半島「統一」の経済的恩恵は大きい、ただし......
アンソニー・フェンソム
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/05/post-10156.php
朝鮮半島に平和が訪れれば、韓国と北朝鮮の両方が相当な経済的恩恵を受けるだろう。もちろん、現在の韓国と北朝鮮は政治的にも
社会的にも大きく異なり、経済格差も大きい。南北統一の莫大なコストを考えると、過度の楽観論は禁物だとする慎重論もある。
それでも4月27日の南北首脳会談が、朝鮮半島の平和に向けて現実的見通しを高めたのは間違いない。
この結果、韓国と北朝鮮には「平和の配当」がもたらされる可能性が高い。金融市場もその恩恵を受ける領域の1つだ。

平和条約の次の段階となる南北統一は、莫大な恩恵とコストの両方をもたらすだろう。「北朝鮮の人口約2500万人は比較的若く、
(少子高齢化が進む)韓国の人口動態を改善する。国防費も減るだろう」と、レザーは語る。「だが、統一のコストは莫大だ。
韓国と北朝鮮の経済格差は、東西ドイツの比ではない。韓国政府はかつて、統一のコストをGDP100%相当と試算したことがある」
だが北朝鮮にとって、平和条約がもたらす経済的な恩恵は大きい。「北朝鮮の指導部は、中国とベトナムが政治的締め付けを
緩めずに経済を自由化して、見事な変革を遂げてきたのを見てきた」と、米資産運用会社マシューズ・アジアの
ポートフォリオマネジャーであるマイケル・オーは語る。
「若き金正恩(キム・ジョンウン)(朝鮮労働党委員長)が今後30年間を見据えたとき、北朝鮮も中国やベトナムのようになれるはずだ
と思ったとしても、不思議はない」

2018年5月17日
日本が「蚊帳の外」より懸念すべき、安保環境の大変動と「蚊帳の穴」
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/05/post-10170.php
史上初となる米朝首脳会談は、6月12日にシンガポールで開催されることがトランプ政権により発表された。関心は非核化の行方に
集まりがちだが、会談の結果、日本の安全保障はどのような影響を受けるのか。朝鮮半島情勢に詳しい新潟県立大学の浅羽祐樹教授
に本誌・前川祐補が聞いた。

――アメリカがICBM(大陸間弾道ミサイル)の廃棄で北と手打ちした場合、日本と仲たがいしかねないと。

同盟国とはいえ100%、国益が一致するわけではない。そもそも地政学的に、日本(や在日米軍)に特有の課題がある。
アメリカ本土とハワイやグアムに届くミサイルは全廃されたとしても、日本を射程に入れるスカッドやノドンが残ると大問題だ。

――非核化の見通しは。

米朝がCVID(完全〔complete〕かつ検証可能〔verifiable〕で、不可逆的〔irreversible〕な核廃棄〔dismantlement〕)で合意し
実施できたとしても、設計図や技術、科学者は残る。核兵器、製造場、実験場は解体し、核物質を国外に供出させても、
理論上はいつでも核開発を再開できる。査察についても、衛星だけでなく人的諜報も通じて決定的証拠をつかまない限り、
自己申告で了とせざるを得ない。こうした問題では北朝鮮に限らず、情報の非対称性がボトルネックになる。

――必ずしも「恒久的(permanent)」にはならない非核化と、中距離ミサイルは保有する国家が日本の隣に居座るということになる。

非核化よりも平和体制への転換が先に進むのも問題だ。板門店宣言では今年中にも朝鮮戦争の終戦を宣言し、
南北と米(中)だけで平和協定を締結するシナリオが示された。ここで日本は当事者になりようがないが、地域秩序の再編過程で
「蚊帳の外」だとスカッドミサイルなどとの共存が「平和」とされかねない。しかもこれらのミサイルは連射が可能で、
日本海の同じ地点に正確に着弾した。核弾頭も既に装着できる。日本にとっては、ICBMよりこちらのほうが差し迫った脅威だ。