『デッドゾーン』原題/THE DEAD ZONE/1983/103分/監督:クローネンバーグ/原作:スティーブン・キング


原作付きということもあって、初期のクローネンバーグ映画としては最も解りやすいタイトルである。
交通事故によって長い昏睡状態にあった主人公が意識を回復すると、なぜか「触れた相手の未来が見えてしまう」
という、本人が望まない『超能力』が備わってしまい、それがマスコミにバレると当然、厄介事相談事が気軽な手紙で
怒涛のように押し寄せる。例えば『超能力でわたしの猫を探してください』とかw 挙句地元の変態殺人犯逮捕に
決定的な協力をしてしまい、ついにはとある議員候補者の未来を知って重大な決断に悩むハメに陥る。
 
『超能力』と言うと聞こえはそう悪くない気がするが、クローネンバーグが撮るわけだから、実相つかそのへんは極めて
ユニークな『病理と不幸』である。彼が撮るのは『超能力者という奇病』なのだ。さらにこの場合、その『奇病』を
便利に使われるという『不幸』も付随して、身体的には回復しても主人公の人生は『不可逆的』な変質を余儀なくされる。
昏睡してる間に婚約者は別の奴とくっついて子供いたりするとか、気の毒にもほどがあるw
クローネンバーグ特有のトラウマになりそうな『医療現場的に生々しいグロ描写』は控えめだが、ないわけではない。
 
この映画は多くの、そして大抵は不評のキング映画化タイトル中では非常に地味だが、SF悲劇として今でもかなり評価されている。
なにしろ『ザ・フライ』と並んで最も「民主的なクローネンバーグ映画」なのだ。
だからついでに、>>729、『ザ・フライ』は成功したリメイクの一つではあるな
 
※地雷率/グロを求めてクローネンバーグを観る奴には大+ SFを観る奴には名作(と書くとSF板では異論が噴出するがw