加速する中国の「台湾いじめ」、国際スポーツ大会が急遽中止に | 台湾ニュース拾い読み

「台中市が持つ第1回東アジアユースゲームスの開催権を剥奪する」──。7月24日に東アジアオリンピック委員会(EAOC)が突如発表した決議内容を受け、台湾全域に衝撃が走った。

中国がEAOCを使って台湾排除に動いたのは明らかで、台湾の総統府は即刻「スポーツに政治を持ち込むことは許されない。理性を欠いた中国の横暴と委員会の誤った決議に断固として反対する」との声明を発表した。

とはいえ、苛烈さを増す中国の外交圧力を前に抗う術はなく、台湾は一層の外交的孤立が懸念されている。

東アジアユースゲームスはこれまで「東アジア競技大会」として4年に1回、アジア競技大会と夏季オリンピックとの間の奇数年に開催してきた国際スポーツ大会だ。

2019年から東アジアユースゲームスに衣替えすることが決まっており、5年前に第1回の開催権を得た台中市は、9ヵ国・地域から2300人を迎え入れるためのインフラ整備やボランティアスタッフの研修などを着々と進めている。

同市の林佳龍市長によると、これまでに6億7000万台湾元(約24億3000万円)以上を投入したという。

開幕まであと1年に迫った国際競技大会の開催権が強制的に剥奪される事態は、前代未聞と言っていい。総統府の黄重諺・発言人(スポークスパーソン)は「これで開催を諦めたわけではなく、EAOCや各国・地域に決議の撤回を求めていく」と述べた。

「自由時報」によると、台湾で近年、活発化している市民運動「東京奥運正名活動」が開催権剥奪の口実にされたという。東京奥運正名活動は、2020年の東京五輪・パラリンピックに「中華台北(チャイニーズ・タイペイ)」ではなく「台湾」「TAIWAN」として参加できるよう関係機関に働きかけていくのというものだ。

そもそも「チャイニーズ・タイペイ」には複雑な背景がある。1971年の国連総会で「中国の唯一の合法的代表は中華人民共和国」との決議が採択され、中華民国=台湾は国連を脱退。米国や日本などの各国は相次いで台湾と断交し、中国と国交を樹立した。

同時に台湾は国際スポーツ界でも孤立することになり、国際オリンピック委員会(IOC)は1979年、中国でも中華民国でも台湾でもない「チャイニーズ・タイペイ」としてならば台湾選手の大会参加を認める判断を下す。

チャイニーズ・タイペイの漢字表記は「中華台北」と「中国台北」のどちらにするかで中台が揉めていたが、1989年に「中華台北」とすることで合意し、中台間のスポーツ交流も次第に広がっていった経緯がある。

「台湾は『国』ではなく、われわれの領土の一部分にすぎない」と主張する中国にとって、台湾が台湾として国際社会で存在感を示すのは絶対に看過できない。このため中国はEAOCに、「台湾の名で東京五輪に参加しようとする市民運動は、オリンピック憲章の第1章第2項―2(スポーツと選手を政治的または商業的に不適切に利用することに反対)に違反する」と提議、過半数の理事の賛同を得た。

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続く)