韓国政府の焦った行動は取り返しのつかない破滅を招きかねない。金正恩が核・ミサイル施設の爆破や解体など「非核化ショー」を通じ、トランプ大統領の11月の中間選挙を助ければ、米国は終戦宣言、平和協定に応じる可能性がある。平和協定は米軍撤退につながる。

 そうなれば、韓国は銃を一発も撃てずに、金正恩の「隠した核兵力」にひざまずくほかない。そんな日が来れば、過去70年間韓国が成し遂げてきた経済発展と自由民主主義、人権、思想・宗教・言論・出版の自由、子どもたちの未来、年金と貯蓄までもが丸ごと吹き飛んでしまう。一言で表現するならば、「国家の自殺」だ。

 「韓半島にこれ以上戦争は起きない」という今年4月27日の板門店宣言を文字通り信じたい。しかし、北朝鮮の「平和攻勢」にだまされたことは一度や二度ではない。ジャーナリストのドン・オーバードーファーは著書「二つのコリア」で1972年7月の歴史的な南北共同宣言も韓国を米日から切り離すための韓国の意図的な平和攻勢だったと指摘している。金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の南北首脳会談の当時も北朝鮮はひそかに核武力を強化した。文在寅政権だからといって事情は異なるだろうか。「北朝鮮の核が民族の核」になれば、世の中に恐れるものはない強国になるわけではない。韓国が北朝鮮の核に屈服する世の中が訪れるだけだ。5000万人の韓国人は現在の北朝鮮住民のように、金正恩の強圧体制の前で何も言えずに頭を下げることになるだろう。そんな世の中を望むというのか。

池海範(チ・ヘボム)記者