統計庁長を更迭することにした文大統領は、後任選びに苦心していた。
必要なのは、現在の状況を文大統領にとって出来るだけ有利に発表してくれる人材なのだが、数値を大切にする統計庁…そんな人物はなかなか居ない。
そんな大統領のもとへ、部下がやってきた。

「3名が是非後任に就きたいと名乗り出ています。どうでしょう? 後任として誰がふさわしいか、会ってみませんか?」
大統領はうなづき、とにかく会ってみることにした。

一人目はソウル大学の数学者だという。大統領は彼に尋ねた。
「ちょっと聞くんだがね、2+2の答えは何かね?」
数学者は驚いた表情をしたが、すぐに答えた。
「4です」
大統領はイライラした顔で確認した。
「4?」
数学者は怪訝な顔で答えた。
「ええ。4ですよ」
大統領は彼を不採用にした。

次は統計学者がやって来た。大統領は尋ねた。
「ちょっと聞くんだがね、2+2の答えは何かね?」
統計学者は答えた。
「平均すると4になります」
大統領はパッと顔を明るくして更に聞いた。
「平均すると? それはいったい…?」
統計学者は慎重な顔つきになった。
「無論、誤差が約4パーセントは有りますが。しかし統計とはそんなものです」
大統領はガッカリして彼を不採用にした。

最後は学者ではなく、ただの下町の会計士だった。大統領は気乗りしない様子で尋ねた。
「2+2の答えは何かね?」
一気に会計士の顔つきが厳しいものになった。彼は素早く立ち上がり、ドアの外に誰もいない事を確かめ、静かに静かにカギをかけた。次に窓へ近づき、ブラインドを下げると、人差し指を唇に当てて大統領のすぐそばに来た。
そうして聞こえるか聞こえないか位の小さな声で
「2+2の答えをどうしたいんですか?」
と聞いた。

大統領は彼を採用した。