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在日コリアンのライターがクルド人取材で痛感した「らしさ」という罠
本当の問題はどこに潜んでいるのか
金村 詩恩
2018/09/16

日本に住むクルド人たちに話を聞いた

クルドの人たちはゴールデンウィークとお盆の季節になるといくつかの家族で河原に行って、バーベキューをするらしい。

前日から一家総出でバーベキューの仕込みが始まる。パンを焼くのは女性の仕事で、ひき肉を大きなタライでこねて、肉団子を作るのは男性の仕事だそうだ。

私が「そのバーベキューはどこでやるんですか?」と聞くとクルド人支援をしている地元の女性は「県内だよ。県外に出るためには入管に届け出を出さなくちゃいけないから」と答えた。

私はこの話を聞いて「クルド人らしさ」を感じた。

蕨に「ココシバ」というブックカフェがあり、近所に住んでいるクルド人のお母さんたちから教えてもらったというスイーツを出している。そこのスイーツを食べた私は蕨に住むクルド人たちに興味を持ち、取材を始めた。

まず、最初にクルド人の支援を行っている地元の女性に取材を行った。冒頭に書いた「クルド人たちのバーベキューの話」は彼女から聞いた話だ。

私は取材中、ノートにクルド人を感じさせる話を書いていった。

次に取材に行ったのはクルド人の子どもを対象とした学習支援教室だ。日本の学校に子供を通わせているクルド人たちは日本語が十分に分からない人たちが多いので、子どもに学校で課せられる宿題を教えることが難しい。

そこで地元に住んでいる有志の人たちや遠くから来たボランティアたちが集まり、子どもたちに学校で出された宿題のサポートをしたり、学校での勉強をより分かりやすく教えている。

私がちょうど取材に行ったとき、夏休みが終わる直前で、子どもたちは大量の宿題を抱え、ボランティアたちの助けを借りながら宿題をこなしていた。

取材に入った私もボランティアにまじって、小学校3年生だという女の子の宿題のサポートをした。

女の子は黄色いファンタの入った水筒を飲みながら、算数のプリントをいやいやこなしている。私が「ファンタ好きなの?」と聞くと「コーラのほうが好きだけど、黄色いファンタのほうが女の子っぽいじゃん」とその子は言った。

「そういうものかなぁ」と思っているとその子は突然、「なんか飽きちゃった」と言い始めた。

「これやらないと夏休み終わらないよ」と言うと別の子のサポートをしているボランティアの女性を指さしながら「私、男の人とじゃなくて、女の人と宿題やりたい」と言う。

「良いから、早くやる」と私が言うとその子は突然、「お兄さんさ、女友達少ないでしょ?お兄さんみたいな変な人に女の子は寄り付かないもん」と言ってきた。

「こう見えても女友達は意外と多いんだ」と思いながら私は「べっ、べつにそんなことないもん!」と答えておいた。

勉強の時間が終わると、クルドの子どもたちみんなで鬼ごっこをして、クタクタになりながら、「クルドの子たちの素顔を見ることができた」と思い、自宅に帰って、この日あったことを取材ノートに書いた。
(リンク先に続きあり)