家事調停委員の人選を巡る裁判所の方針に、神奈川県弁護士会が反発を強めている。同弁護士会が候補者として推薦した女性弁護士が外国籍であることを理由に、裁判所側に就任を断られたためだ。同弁護士会は芳野直子会長名で声明を公表し、日本国籍の有無によらず、有為な人材の登用に道を開くよう最高裁などに改善を求めた。

家事調停委員は、家裁で行われる調停を担当する非常勤公務員。家族間の紛争を巡って当事者双方の間に入り、主張を整理・調整しながら合意による解決を仲立ちする。同弁護士会は任期2年の改選時に、横浜家裁からの依頼に基づいて候補者を募り、その中から推薦している。

今年6月には、10月1日付で就任する弁護士9人を推薦。しかし横浜家裁は8月、このうち韓国籍の姜(きょう)文江(ふみえ)弁護士(47)について、任命権者である最高裁への上申を見送る方針を弁護士会側に伝えた。

家事調停委員の資格について定めた家事事件手続法には、日本国籍を要求する規定はないものの、最高裁は2008年、公権力を行使する公務員に就くには日本国籍を必要とするとの見解を表明。横浜家裁は、姜弁護士の上申見送りの対応について、最高裁の見解に基づき外国籍であることを理由としている。

最高裁の見解には反発も根強く、日弁連や各地の弁護士会はこれまで、外国籍市民の司法参画を拡充するよう意見書や声明を裁判所側に送付。国連人種差別撤廃委員会も14年と今年8月、外国籍市民の公務就任について広く門戸を開くよう改善を求める勧告を相次いで出している。

神奈川県弁護士会も会長声明の中で、外国籍市民を一律に排除する最高裁の姿勢を疑問視。調停委員について、当事者双方との話し合いを通じて合意案を練り上げていく作業が職務の本質とした上で、「職務の遂行に具体的な公権力の行使や重要な決定への参画は伴わない」とし、最高裁の見解の不当性を強調した。

また、在留外国人が増加している昨今の時代背景にも言及。「十分な資質を有する外国籍の人が調停に携わることは制度の充実につながり、多文化共生社会の形成を後押しすることにもなる」と訴えている。

ソース:カナロコ
http://www.kanaloco.jp/article/365737