【ソウル=鈴木壮太郎】

在日米軍が韓国人の基地への立ち入りを制限したことが明らかになった。米軍の準機関紙スターズ・アンド・ストライプス(電子版)が15日報じた。在日米軍は理由を明らかにしていないが、北朝鮮との融和に傾く韓国に対する米国の警戒感を映したとの観測も韓国で浮上している。

同紙によると、横田基地(東京都)入り口の掲示に、追加審査なしには基地に立ち入れない約50の国籍者リストに韓国が加わった。米国の同盟国ながら、北朝鮮や中国、ロシア、イランなどと同じ扱いになった。

この措置について、韓国大手紙の朝鮮日報は「韓国に対する米軍の認識の変化と関連があるとの分析がある」と報じた。同リストには韓国だけでなくフランスも含まれ、別の理由の可能性もあるが、韓国でこうした見方が浮上する背景には、北朝鮮を巡る米韓のぎくしゃくした関係がある。

韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相が10日の国会答弁で、北朝鮮に対する独自制裁の解除を検討する考えを示すと、トランプ米大統領は「韓国は我々の承認なしには制裁解除をしない」と苦言を呈した。

9月の南北首脳会談に合わせて双方の国防相が署名した「軍事分野合意書」を巡っては、ポンペオ国務長官が9月下旬、康外相に激しい非難のことばを浴びせた。米国との十分な調整もないまま、大幅な軍事的緊張緩和措置で合意してしまったからだ。

南北両軍と非武装地帯(DMZ)を管轄する朝鮮国連軍司令部は16日、合意書に基づき軍事境界線にある板門店の共同警備区域(JSA)を非武装化する協議を行い、地雷撤去と監視哨所、火力装備の撤収で合意。非武装化後は観光客の軍事境界線を越えた自由往来を認めることを決めた。

ただ、合意文には偵察が難しくなる軍事境界線上空の航空機の飛行禁止区域の設定など、安保上重大な問題をはらむ内容が含まれる。在韓米軍司令官が司令官を兼務する朝鮮国連軍司令部は合意文の全体について同意したわけではなく、今回の協議もあくまでJSAに限っての話だ。

韓国は南北融和を前進させようと力むあまり、北朝鮮への忖度(そんたく)が目立つ。15日の南北閣僚級会談では北朝鮮が嫌がる脱北者の記者を排除。韓国記者団が猛抗議する一幕もあった。文在寅(ムン・ジェイン)政権の融和姿勢への懸念は国内でも上がっている。


2018/10/17付日本経済新聞 朝刊
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO3655262016102018FF1000/