文在寅(ムン・ジェイン)大統領が先週、今回の訪欧について「韓半島(朝鮮半島)平和プロセスについて幅広い支持を得た」と言ったのを聞いて、あらためて驚いた。一般の評価とあまりにもかけ離れている話だからだ。「あらためて」という言葉を使ったのは、訪欧と関連して驚いたことが一度や二度ではなかったからだ。

文大統領は「対北朝鮮制裁の緩和を通じた非核化促進」というメッセージを持って、欧州各国を訪問した。これに先立つ現地メディアとのインタビューで、「北朝鮮の非核化がある段階に到達すれば経済制裁を徐々に緩めることを真摯(しんし)に検討すべきだ」と事前に言っていた。この程度なら、事前の地ならしが済んだという意味だ。

20数年間、歴代大統領の首脳会談を見守ってきた経験では、それは常識だった。ところが、韓仏首脳会談で、「対北朝鮮制裁の緩和を通じて非核化を促進できるよう力を貸してほしい」という文大統領の要求に、マクロン仏大統領は冷静に一線を画した。

共同宣言には、北朝鮮が身震いするほど嫌がる「CVID」(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)という表現まで盛り込まれた。文大統領だけでなく、首脳会談の準備をした側近たちも当惑したことだろうと思っていた。

ところが、大統領府関係者は「うまく行った。期待していたよりもうまく行った」と語った。

首脳会談の結果を見てまず驚き、その結果に対する大統領府の解釈にまた驚いた。

文大統領はその後も欧州の首脳に会うたびに「対北朝鮮制裁緩和」を頼んだが、CVIDという同じ答えが返ってきた。51カ国が参加したアジア欧州会議(ASEM)首脳会談の閉幕宣言にもCVIDという文言が盛り込まれた。

欧州諸国の間では「CVIDが実現するまで北朝鮮に圧力を加える」という共通認識があったのにもかかわらず、韓国大統領はこのような流れを読み取れず、的外れな主張をしていたわけだ。

外交・安保担当が大統領の補佐を誤ったために恥をかいたのだ。これほどの事態となると外交上、事故を起こしたと言っていい。文大統領が訪欧結果に逆上したら問責人事をするかもしれないと思っていたが、見当違いだった。

大統領訪欧の準備をしていた側近たちは「欧州諸国に対して、対北朝鮮制裁緩和の必要性を公論化した」と自ら評した。

公論化とは、あまりよく知られていない問題について関心を持つよう促し、議論のテーマとして取り上げるプロセスのことだ。北朝鮮の核問題はそうしたプロセスの対象ではない。

1993年の第1次北朝鮮核問題以降、国際会議が開かれるたびに議論されてきた。北大西洋条約機構(NATO)事務総長は今年初め、ドイツ・ミュンヘンで行われた会議で、「ミュンヘンはワシントンより平壌から近い。北朝鮮の核はNATO同盟国すべてにとって脅威となるので、最大限の圧力をかけて放棄させなければならない」と言った。

北朝鮮の核について、韓国は南北和解と緊張解消という観点から見ているが、欧州はグローバルな安全保障問題だと見なしている。国内政治で公論化がうまく行ったことを念頭に、欧州諸国に伝えたいと思っていたとしたら、とんでもない見当違いだろう。


2018/10/28 05:08
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