アフリカのケニアに進出している中国の自動車会社の中国人社員が現地の従業員を「お前はサルみたいだな。ウフル・ケニヤッタ大統領も含め、ケニア人はすべてサルだ」などの侮蔑的な言葉を浴びせている動画がネット上で拡散。ケニア人による批判が高まり、ケニア政府も国民や大統領を侮辱されたことを重く見て、名誉棄損などを理由に中国人社員を国外退去処分にした。

 ケニアでは中国の経済支援で首都ナイロビからモンバサ間の約500kmに及ぶ鉄道建設が進むなど、多数の中国企業が進出しているなか、中国人によるケニア人への差別や偏見に満ちた言動が多くみられ社会問題化。ケニア人の対中感情が悪化している。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が報じた。

 この差別発言が出たのは、ケニア人従業員が中国人の社員と一緒に販売促進のための国内出張したときのこと。2人がたまたまサルがバナナを持った絵が描かれた風船がかかった店の前を通りかかったところ、「劉」という26歳の社員が従業員を指さして「お前の兄弟だな」とからかったという。

 これにカチンときた従業員は、劉氏の発言を携帯電話で隠し撮り。「ケニアは1963年から独立しており、民主的な国で、国民も自由で奴隷ではない」などと反論すると、劉氏は「サルはもともとも自由だ」とさらに挑発。「お前の国の大統領もサルだ」などの暴言を吐いたという。

 この動画がネット上で拡散し、劉氏は当局に身柄を拘束され国外退去処分になった。駐ケニア中国大使館のスポークスマンは「これは残念な犯罪だ。しかし、この26歳の若い中国人の個人的な発言や感情は、ケニア在住の大多数の中国人の見方を代表しているものではない」などと弁明した。

 しかし、ナイロビの若いケニア人はニューヨーク・タイムズの取材に対して、勤務先で中国人の上司が些細なミスをしたケニア女性従業員の頬を平手打ちしたのを見たほか、会社内で中国人とケニア人ではトイレが別々に設けられているなどの差別があると話している。

 また、ナイロビ・モンバサ間の鉄道建設のセレモニーでは、列車に大統領が乗った際、運転士はケニア人女性だったが、通常の運行では運転はすべて中国人が行っているという。

 ケニアの対中感情が悪化するなか、最近ではケニア当局も中国に対して強硬姿勢を示している。ケニアの警察当局は9月初旬、不法移民の取り締まりを理由に、ナイロビの中国国営中央テレビ局(CCTV)傘下の中国環球電視網(CGTN)アフリカ本部を強制捜査し、複数の中国人記者を一時拘束している。これに対して、中国大使館は遺憾の意を表明するなど、外交関係にも微妙に影響しつつあるようだ。

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