「ためにする反日記事」の掲載は、韓国メディアの常だ。しかし、徴用工補償判決を機に、反日の度を一挙に高めようとする意図が働いているのか、最近の反日記事は質的劣化が目立つ。それは取りも直さず、読者である韓国の国民の知的劣化と直結している。

 事実上の国営通信社である聯合ニュースが配信した「強制動員の公文書、最終決裁者は日王(注=天皇のこと)、責任明確」という見出しの記事(韓国語サイト、2018年10月22日)は、その典型だ。

 近代史専門の国立大学教授が、韓国の学術会議で発表した内容をトレースした記事だ。彼は日本の国立公文書館の署名原本文書群にある「国家総動員法」関連原本を閲覧した。

 その結果、1938〜42年に作られた職業紹介所官制、賃金統制令、国民徴用令、総動員業務事業主計画令、賃金臨時措置令など関連勅令すべての最終決裁者が日王であるという事実が「記録学的にさらに明確になった」と述べ、天皇の責任を追及すべきだと主張した。

 戦前の日本は立憲君主制であり、厳格な法治国家だった。あらゆる法律が国家元首(天皇)の最終裁可を経て交付されるのは当然だ。まして勅令は…きっと、この教授は「勅令」の意味を知らないのだろう。

 ともかく、日本の原本を閲覧する必要などない。立憲君主制国家なら当たり前のことばかりなのだから。

 そんな内容を学術会議で発表しても、「当たり前のことではないか」と指摘する参加者はいなかったのだろう。学術会議そのものも、長文のニュースとして配信した聯合ニュースも、その知的レベルを疑わざるを得ない。

 中央日報は「ポカリ・オロナミンCを飲めば靖国参拝後援」と題する記事(18年10月10日)を掲載した。

 こういう論法だ。韓国にある薬品メーカー「東亜大塚」の筆頭株主(50%)は、日本の大塚製薬である。大塚製薬は製薬産業政治連盟に加盟している。製薬産業政治連盟は靖国神社参拝国会議員14人に政治献金をしている。

 従って、「ポカリスエットとオロナミンCを消費するほど結果的に靖国神社に参拝する日本右派政治家の政治資金に」と結論づけ、不買をあおっている。

 いっそのこと“極右・安倍政権”の税収増につながるから、すべての日本製品は買ってはいけないし、日本に旅行に行ってもいけないと書いてくれた方がスッキリする。

 中央日報の記事は、通信社「ニュース1」の配信記事(18年10月9日)のリライト(=東亜日報は配信記事をそのまま転載)だ。ところが、そのニュース1の記事は「女性経済新聞」というマイナーメディアの記事(18年9月5日)を“パクリ・リライト”したのではないかと疑われる。1カ月も遅い報道なのに、女性経済新聞の内容を上回る事実が出ていないのだから。

 反日世論を広げるためなら“パクリ・リライト”ぐらいは許されるとして、これらの記事を歓迎する韓国人読者の知的レベルは相当に劣化しているのではあるまいか。

 ■室谷克実(むろたに・かつみ) 1949年、東京都生まれ。慶応大学法学部卒。時事通信入社、政治部記者、ソウル特派員、「時事解説」編集長、外交知識普及会常務理事などを経て、評論活動に。著書・共著に『悪韓論』(新潮新書)、『崩韓論』(飛鳥新社)、『韓国リスク』(産経新聞出版)など多数。

https://www.zakzak.co.jp/soc/news/181101/soc1811010003-n1.html
2018.11.1