文在寅大統領が元慰安婦らへの支援事業を行う「和解・癒やし財団」の解散方針を固めるなど、一向に改善が進まない日韓関係。ここに来て、韓国外交官の間でも日本勤務を拒否する動きが出てきた。

 韓国の官僚人事は3月と8月・9月に行われるのが通例だ。だが、駐日韓国大使館政務課に勤務する書記官級3人がまもなく帰国するのに伴い、外交部が後任を募集したところ、申請者が1人もいなかったという。外交部は再募集を掛けているが、もし申請者がいなければ、入省したばかりの新人や日本とは無関係の外交官を送り込まなければならない状況に陥っている。

 かつて韓国外交官の間で“ジャパン・スクール”は花形で、日本を担当する北東アジア局長は北米局長と並んで出世コースの一つだった。ところが、今では北東アジア局そのものを“廃棄処分された集団”と自嘲まじりの言葉で卑下するジャパン・スクールの外交官さえいるほどだ。

「韓日間には敏感な外交問題が山積みで苦労も多い。それなのに2010年代に入ってからというもの、朴俊勇・駐サンフランシスコ総領事を除いて、恵まれたポストに就いている北東アジア局長経験者はいません。しかも、文政権以降、ジャパン・スクールを冷遇する傾向が加速しているのです」(外交部関係者)

「仕事のない」ポストに……

 象徴的なのは、朴槿恵政権下で15年12月の日韓慰安婦合意における韓国側実務責任者だった李相徳北東アジア局長(当時)を巡る人事だ。

 李氏はその後、シンガポール大使に着任したが、文政権発足後の今年1月、突然帰任命令を受けた。慰安婦合意の発表文に「最終的・不可逆的解決」という文言が挿入された経緯が問題視された、と言われている。現在、李氏は外交部の本部大使。長らく「仕事のない」(同前)待機ポストに据え置かれたままだ。

 孔魯明元外交部長官が語る。

「慰安婦合意からも分かるように、日本で政務の仕事に携わった場合、政権交代後に責任を問われかねない。若い外交官が自分のキャリアを考えた時、そんな危険を冒そうとは考えないのでしょう。日本は安保面でも非常に重要な国なのに、残念なことです」

 首脳同士の相性も微妙な中、ジャパン・スクールの没落が未来志向の日韓関係をますます遠いものにしている。

http://bunshun.jp/articles/-/9530
文春オンライン 週刊文春 2018年11月8日号 11時間前