ソウル中央地検は1月24日、職権乱用などの疑いで、前最高裁長官の梁承泰容疑者(70)を逮捕した。最高裁長官経験者の逮捕は、憲政史上初めてのことだという。

「梁氏は徴用工裁判による日韓関係の悪化を懸念する朴槿恵政権(当時)の意向を受け、判決言い渡しを遅らせたり、担当判事らに原告勝訴の二審判決を破棄するよう求めたりした疑いがかけられています」(ソウル特派員)

徴用工裁判は文在寅政権発足後に大きく動いた。最高裁が新日鉄住金に賠償を命じる確定判決を言い渡したのは昨年10月のこと。最高裁は三菱重工業にも同様の確定判決を出し、他の下級審でも日本企業の敗訴が続いている。

「徴用工裁判で文政権が“反日姿勢”を取り続けるのは、支持母体である市民団体の影響が強いからです」(同前)

それが、徴用工裁判をかねてから支援している「民族問題研究所」だ。

■「民族問題研究所」とは一体どんな団体なのか?

「盧武鉉政権時代、植民地時代に日本に協力した韓国人の名前を列挙した親日人名辞典を作り、バッシングを続ける“親日派狩り”が起きました。その中心的役割を担っていたのが、民族問題研究所です。慰安婦問題における『挺対協』のような存在でしょう」(韓国人ジャーナリスト)

そして、盧大統領の最側近として秘書室長だった文氏が政権を取ったことで、民族問題研究所は改めて影響力を持つようになったのだ。

「彼らは『韓日間の歴史問題の清算』を掲げて活動しており、徴用工裁判支援もその活動の一つなのです」(同前)

民族問題研究所は昨年8月29日、ソウル市龍山区に「植民地歴史博物館」をオープンさせた。韓国にとって8月29日は、日韓併合が行われた「庚戌国恥日」だ。

博物館の紹介文には彼らの思想がよく表れている。

〈日本帝国主義による侵奪の歴史と、それに加担した親日派の行為、輝かしい抗日闘争の歴史を記録し、展示する韓国初の日帝強占期専門歴史博物館です〉

つまり歴史問題を持ち出し、反日活動をすることが市民団体のアイデンティティーとなっており、文政権もそれに追随しているという構図だ。

梁前最高裁長官の逮捕は再び始まった“親日派狩り”の象徴なのかもしれない。


週刊文春 2019年2月7日号
http://bunshun.jp/articles/-/10591
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