※前半割愛(ソース元参照)


議会がねじれ状態なので、内政を強気一辺倒で押していくのは難しい。すると、外交面で得点を稼ごうとするだろう。中国と北朝鮮、それに韓国、ロシアとの関係はどうなるのか。

中国は「貿易戦争で米国に勝てない」と分かっている。昨年11月30日公開コラム(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58716)で書いたように、中国の米国からの輸入額は、米国の中国からの輸入額の3分の1程度しかなく、トランプ政権の制裁関税に同じ規模では対抗できないからだ。自ら信用不安を招いて人民元が急落する懸念があるので、米国債の売却もできない。

習氏は結局、大胆に譲歩して米国との対立を貿易分野にとどめようとするだろう。すでに、米国産大豆の大幅輸入拡大や自動車関税の引き下げなどがメニューに上がっている。トランプ氏とすれば、もちろん大歓迎である。

だからといって、根本的な対立が解消するわけではない。1月11日公開コラム(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59371)で書いたように、南シナ海での軍事基地建設をはじめ、中国の対外膨張路線は止まらないからだ。いずれにせよ、トランプ政権は中国を締め上げていく。

北朝鮮については、引き続き制裁圧力を維持するだろう。具体的な非核化なしの制裁解除は考えられない。正恩氏は中国の後ろ盾を頼みに抵抗するだろうが、米中交渉の展開次第では、むしろ中国は米国をなだめるために、北朝鮮に圧力をかける可能性もある。

■問題は韓国だ

ロシアはどうか。米国にとって最大の敵は中国だ。それはマティス国防長官の辞任後、長官代行に就いたシャナハン氏が国防総省での第一声で「中国、中国、中国に気をつけろ」と訓示した件でも、あきらかである。

そもそも、ロシアは国内総生産(GDP)でみれば、中国の8分の1の経済力しかない。旧ソ連の栄光を思えば、プーチン大統領は、なんとしても経済を活性化させて中国を見返したいと思っているだろう。

一方、中国を主敵とする米国からみれば、ロシアとの関係を改善して中国をけん制させたほうが合理的だ。実際、トランプ氏は一貫してロシアに宥和的である。中国をめぐって米ロの思惑は一致する可能性がある。

問題は韓国だ。日本の自衛隊機に対するレーダー照射事件が示したように、文在寅(ムン・ジェイン)政権は急速に反日姿勢を強めている。それは北朝鮮に対する宥和路線の加速と軌を一にしている。私は「反日と親北容共路線は表裏一体」とみる。

なぜかといえば、文政権にとって、もはや「北朝鮮は日本と共通の敵」ではないからだ。そうではなく、北朝鮮は「温かく抱きしめるべき同胞」なのだ。だからこそ、北朝鮮に対する制裁解除に反対する日本が敵になる。

レーダー照射事件以降、安倍晋三政権は韓国を友好国とはみていない。むしろ「北朝鮮に内通する敵」という疑いを強めている。防衛省は実務者協議を打ち切った声明で「引き続き、日韓・日米韓の防衛協力の継続へ向けて真摯に努力していく」と書いているが、これは建前にすぎない。

いま安倍政権や自衛隊の中枢で「日韓防衛協力を継続できる環境にある」などと本気で考えている責任者はいない。例外は、照射事件のビデオ公表を渋った岩屋毅防衛相くらいだろう。

トランプ政権の韓国に対するスタンスは演説でもはっきりした。朝鮮半島情勢が揺れ動いているのに、韓国を指す「Korea」は一言もなかったのだ。安倍首相の施政方針演説(https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement2/20180122siseihousin.html)でさえ「米国や韓国をはじめ国際社会と緊密に連携」と述べていたのに、ひどい扱いだ。

いや、言い直そう。実に適切な扱いである。韓国は、日本だけでなく米国にも見捨てられつつある。演説で語られなかった点にこそ、新しい発見があった。


長谷川 幸洋 2019.02.08
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59787
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59787?page=2
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