【ソウル=名村隆寛】韓国では来月1日、1919年に起きた日本からの独立運動「三・一独立運動」から100年の記念日となる。北朝鮮との民族共同の行事も目指していた韓国だが、北朝鮮側は21日、共同行事の開催が困難であることを通報してきた。日本との歴史をめぐる節目の記念日は、韓国だけの内向きのものになりそうだ。

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、昨年9月に平壌で行われた金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との3回目の南北首脳会談で、三・一独立運動100周年の南北共同記念に向けた実務協議と、金正恩氏の「近い時期のソウル訪問」で合意。韓国では年内の訪韓も取り沙汰されていたが実現しなかった。

関係筋によると、文在寅政権は最近まで三・一独立運動記念日に合わせた金正恩氏の訪韓を期待していたという。ところが、米朝首脳再会談が今月末にベトナムで開かれることになった。北朝鮮としては、記念日よりもトランプ米大統領との首脳会談の方が重要ということだ。

朗報を待っていた韓国政府だが、記念日まで8日の21日になり、北朝鮮から「時期的に共同行事の準備は難しい」と韓国統一省に公式に通報が来た。

 また、韓国は「抗日」での共闘を呼びかけたが、北朝鮮は今月、漂流漁船や船員を救助した日本に謝意を表明するなど、関係改善に向けて日本に秋波を送ってもいる。南北共同行事への韓国の期待は外れた。

 今年は三・一独立運動に加え、中国・上海での亡命政府「大韓民国臨時政府」の設立(4月11日)から100周年に当たる。

韓国では本来、李承晩(イ・スンマン)初代大統領が就任した1948年8月15日が建国記念日だが、文大統領は臨時政府設立の19年を「建国の日」とみなしている。昨年8月の建国記念日は「政府樹立70周年」とされた。

 共同行事の霧散以前に北朝鮮は、文在寅政権が大韓民国臨時政府の設立に合わせ今年を建国100年とすることに冷ややかだ。北朝鮮では建国を1948年9月9日と定めている。昨年の建国70年の記念日には中露首脳が祝電を贈り、平壌では軍事パレードなどの行事で華々しく祝った。

 北朝鮮にとり正統な歴史は金日成(イルソン)主席の抗日革命史だけだ。臨時政府を強調し共闘を求める文在寅政権だが、建国をめぐる認識は根本から食い違っている。

https://www.sankei.com/world/news/190221/wor1902210034-n1.html
産経新聞 2019.2.21 20:30