「最初の米朝会談と同様、非核化に向けて何の進展がなかったとしても、トランプ大統領が自画自賛できる程度の成果があれば大統領再選へのメドは立つわけです。北朝鮮も経済制裁の緩和などの何らかの実利を得るために、表面的には譲歩するでしょう。しかも最近の米中関係の悪化ぶりを計算に入れている正恩委員長のバックには習近平中国国家主席がおり、この威光を背にした正恩委員長は両国の間をうまく泳ぎ続けるでしょうね」(前出・北朝鮮ウオッチャー)

 とはいえ、北朝鮮の内部事情や経済不振は相当深刻だ。トランプ大統領はどうしてここを突かないのか。

 会談直前の24日、正恩委員長は金英哲党副委員長と妹の与正宣伝扇動部第1副部長らを伴い、列車で平壌を立った。留守中の不測の事態に備え、帰国の際は中国かベトナムの仕立てた航空機を使う可能性も示唆されている。

「現在の北朝鮮は、朝鮮人民軍偵察総局VS国家保衛省(秘密警察)VS朝鮮人民軍VS朝鮮労働党組織指導部という、三つ巴どころか四重にも五重にももつれた内部対立があります。この状況は、かつて韓国政府中枢内で、大統領警護室VS韓国中央情報部が朴正熙大統領への“忠誠合戦”を繰り広げた揚げ句に暗殺された状況に極めて似ています」(同)

北朝鮮にとって最大の不安要素は、トランプ大統領の頭の中を覗けないことだ。いつ豹変して“斬首作戦”が復活するか分からない。米国の執拗な“ファーウェイつぶし”を見れば、こうした恐怖が正恩委員長には付きまとう。

 その上、現在の北朝鮮軍に本格的な戦争をする力はない。兵士はミサイル部門を除いて食うのに精いっぱいなのが実情だ。2017年11月、板門店を突破して韓国に亡命した北朝鮮兵が重傷を負って手術を受けた際、体内にいた大量の寄生虫に注目が集まった。化学肥料不足で食糧増産がままならず“人糞農業”に頼っていることが原因で、最前線にいるエリート兵士でさえこのありさまだった。

 北朝鮮は総兵力約120万人もいる軍事大国だが、陸軍の主力戦車である『T62』や空軍の主力機『ミグ21』はともに60年代に旧ソ連で開発された“骨董品”だ。

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週刊実話 2019年03月02日 06時10分