【ワシントン=鳳山太成】米国が中国の産業スパイ活動への取り締まりを強化している。米司法省は23日、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の企業秘密を盗んだ罪で元技術者らを起訴したと発表した。さらに「世界第2位の経済大国が国ぐるみの窃盗に関わっている」と、中国政府の関与も指摘した。ハイテク技術を巡る米中の競争が激しくなるなか、中国が関わる不正行為を重点的に監視するトランプ政権の方針が改めて浮き彫りになった。

米司法省は産業スパイや企業秘密の窃取など14件の罪で、中国系米国人でGEの元技術者と、中国に住む中国人事業家を起訴した。親類関係にある2人は、発電や航空機エンジンなどに使うタービン部品の設計図などの情報を中国に持ち出した疑いがある。起訴状では2人が巧妙な手口で機密を抜き出した経緯を克明に描いた。

大量の暗号化されたファイルが社用パソコンに保存されている――。名門のマサチューセッツ工科大学(MIT)で学位を取り、GEに10年近く在籍する元技術者の異変に会社が気づいたのは2017年暮れだ。専用ソフトを使って監視を始めると18年7月、一見なんの変哲もない「夕焼け」の写真を私用のメールアドレスに送っていたことが発覚した。写真にはタービンの情報がひそかに埋め込まれていた。米連邦捜査局(FBI)も本人の事情聴取など捜査に本格的に乗り出した。

起訴状によると、元技術者と事業家は16年以降、中国で立ち上げたタービン部品会社を成功させるためGEの技術に頼っていった。中国での起業は政府と良好な関係を築けるかが重要だ。地方政府幹部が事業家に対して「元技術者の存在に強い関心を示す」など、先端技術の情報提供を求める様々なプレッシャーがあったという。成果を出した会社は中国政府から金銭など様々な支援を受け取った。

米政府は今回の事件を個人の不正行為として片付けていない。司法省高官は23日の声明で「米国企業の知的財産を強奪する中国政府の戦略を示す見本のような一例だ」と中国政府も糾弾した。

起訴状ではわざわざ冒頭で中国のハイテク産業育成策「中国製造2025」に言及し、タービン技術が重点産業分野に関連していると指摘した。国家ぐるみの不正行為であることを印象づけようとする狙いは明らかだ。

トランプ政権は18年11月、司法省に「中国イニシアチブ」を立ち上げ、産業スパイを重点的に取り締まると宣言した。19年1月には通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)を企業秘密を盗んだ罪で起訴した。知的財産の保護は足元で進む米中貿易協議でも主要議題の一つだ。中国は産業スパイへの関与も否定しているが、米国は今後も追求を強めそうだ。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44136930U9A420C1FF2000/
日本経済新聞 2019/4/24 15:53

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GEのエンジンの写真を撮る男性(18年11月、上海で)=ロイター