ハノイでの米朝首脳会談は決裂したものの、大きく分けて二つのことが確認できた。まず、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長に非核化の意志がないということだ。金委員長は会談の間、終始一貫して古びた寧辺の施設と事実上の全面制裁解除を交換しようとした。米国が体制に脅威を与えたため核開発を行ったと主張する北朝鮮は、米国が準備した朝鮮戦争の終結、修交、脅威の除去、経済協力などの体制保障のフレームには全く関心を示さず、単に制裁解除だけを主張し続けた。結局トランプ大統領は、包括的な非核化合意が可能かどうかを質問し、金委員長は否定的な見解を示した。トランプ大統領のメッセージは簡潔だった。「金委員長には非核化の準備が足りないようだから、準備ができたら連絡せよ」とのことだった。すなわち、第3回首脳会談を行うためには、非核化の戦略的決断を下し、これを証明する措置を執り行うよう要求したのだ。

 こうした状況の中、金委員長の非核化への意志は確かだと、米国に対して間違った情報を伝達してきた韓国が、米朝対話の促進者を装い、グッド・イナフ・ディール(十分に良好な取引)、アーリー・ハーベスト(早期収獲)といった感性的な用語で飾り立て、事実上の制裁緩和を要求してきたのだ。仕事の手順からすれば、当然北朝鮮に非核化の戦略的決断を促し再確認することを優先しなければならなかった。予想通り韓米首脳会談は成果なしに終わった。金委員長でさえ韓国に、さしでがましい仲裁者役はご免だと言い切った。

 これほどまでに南北が共に関心を示す制裁緩和とは一体何なのか。ハノイ会談での最大の成果は、対北制裁が非常に効果的だったということを確認できた点だ。2017年末に水素爆弾と長距離ミサイルの実験が行われたのをきっかけに、国連安全保障理事会(安保理)は、大量破壊兵器(WMD)関連の活動に限られていた対北制裁から、北朝鮮経済に直接影響を与える力強い制裁案へと水準を引き上げ、決議した。石炭など10億ドル(約1120億円)に上る鉱物の輸出が禁止され、北朝鮮の交易は90%近く減少した。外貨稼ぎの主な手段だった海外への人材派遣も大幅に減った。さらに国連安保理は、北朝鮮が輸入することのできる原油を400万バレルに、そして精製油(航空燃料などを含む)は50万バレルに制限した。北朝鮮経済が必要とする精製油を毎年500万バレルとした場合、その90%が阻まれる計算だ。ハノイ会談で金委員長が制裁解除に固執した理由がまさにここにある。

続く。

尹徳敏(ユン・ドクミン)韓国外大碩座(せきざ)教授・元国立外交院長

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2019/04/26/2019042680150.html
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 2019/04/28 05:05