韓国製造業の海外直接投資は金融危機直前の2007年から2017年まで毎年80億ドル前後を維持してきた。しかし昨年は状況が急変した。例年の倍を超える164億ドルだった。直接投資件数も5000件と、過去5年間で最も大幅な増加となった。韓国経済の主軸である製造業の海外流出が懸念される背景だ。

地域別にはアジア地域が89億ドルで全体の54%を占め、中南米と欧州がそれぞれ27億ドルで16.5%、北米は19億ドルで11.6%だった。結果的にアジア:中南米:欧州:北米への製造業直接投資比率は2017と18年でほとんど変わらず5:2:2:1程度の比率が維持された。これは、昨年の製造業の海外直接投資急増は特定地域への海外投資拡大でなく、全体的に幅広く増えたことを意味する。

国別には大幅な増加が見られた。中国は24億ドルから44億ドルに、ベトナムは14億ドルから20億ドルに、米国は8億ドルから19億ドルにそれぞれ急増した。豪州は12億ドル増、インド・香港もそれぞれ9億ドル増となり、ポーランドも増加した。

製造業海外直接投資が急激に増えた原因は何か。まず、教科書的な仮説は世界市場を先に獲得するための迅速な現地化またはグローバル戦略だ。しかし米国が利上げするなど昨年下半期から世界経済全体が減速する可能性が高まり、この仮説は説得力が弱い。ただ、昨年完結したSK半導体の東芝メモリ(約4兆ウォン、35億ドル)買収は国際化戦略の結果と解釈できる。

2つ目の教科書的な仮説は保護貿易障壁を避けるための現地化戦略だ。この仮説は米国、メキシコ、カナダに対する投資増加を説明できる。しかし実際にメキシコへの投資は2017年の4億ドルから1億ドルに減り、カナダへの投資も2017年と18年に変動がなかったため説得力が弱い。さらにこの仮説は開放政策を積極的に拡大している中国やインドに対する製造業の海外直接投資急増を説明できない。

3つ目の理論は国内生産環境あるいは経営環境の悪化による生産拠点の海外脱出だ。賃金や規制強化または法制度の変革などで国内生産環境が悪化する場合、国内企業は最も経営環境が良い国に拠点を移すしかない。この場合、進出する最適国は業種の特性に異なる形で表れる可能性がある。したがってこうした理由で海外直接投資が発生すれば、新しい特定地域への海外投資が突然増えるのではなく、従来の海外投資が行われてきた地域に対する拡大投資形態となる可能性が高い。

我々が注目すべき仮説はまさにこの部分だ。2017年に文在寅(ムン・ジェイン)政権に入り、韓国の製造業の経営環境は確実に悪化した。法人税の引き上げ、最低賃金の2年連続大幅引き上げ(16.4%と10.9%)、52時間勤務制の法制化、週休手当や包括賃金指針、特殊職労働3権に対する保護など多くの新しい労働規制が導入された。このように急激な労働条件の変化は、製造業の経営者には製造業の拠点を全方向的に海外に移すきっかけになったと推定される。

2019年05月07日11時36分 [中央日報/中央日報日本語版]
https://japanese.joins.com/article/085/253085.html?servcode=200&;sectcode=200

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