>>続き。

■トランプを先に裏切ったのは文在寅の方である
 
それなら、「なぜ中ロは、対北朝鮮制裁に参加したのか?」という疑問が出るだろう。

両国は本音では北の核保有容認でも、そのことを公言できない。公言すれば、「中国、ロシア(と米英仏)の核兵器保有は『合法』、他の国の核保有は『違法』」とする「NPT体制」が壊れてしまう。そうなると、最大の敵・米国の同盟国である日本や韓国などが核保有を目指しても、反対する口実がなくなる。

つまり、中ロは、「日韓に核兵器を持たせないため」に、一応北朝鮮の核保有に反対しているのだ。

では、韓国はどうなのか?この国は、中国、ロシア、北朝鮮と共に「段階的非核化」を要求している。つまり、「完全非核化の前に、制裁を解除すべき」という立場である。

<以前から、文氏は世界各国を訪問して、北朝鮮に対する制裁解除を呼びかけてきた。今年1月の年頭記者会見では、開城工業団地と金剛山観光の再開に意欲を見せていた。>(夕刊フジ 4月12日 太線筆者)

これは、米国の軍事同盟国であるはずの韓国が、中国、ロシア、北朝鮮陣営の手先として動いていることを示している。だから、トランプが文を「裏切り者」として「冷遇」するのは、当然だ。

<同盟国の韓国に対し、「冷たすぎる」ようにも見えるトランプ氏の対応は、会談時間にも表れていた。韓国・聯合ニュースによると、トランプ氏と文氏の2人きりの会談は29分間行われたが、報道陣との質疑応答が27分間続き、実際の会談は2分程度だったのだ。>(同上)

■これからの米韓関係と日本が取るべき態度とは
 
これから朝鮮半島情勢は、どうなっていくのだろうか?トランプは、金に妥協する気は、まったくないようだ。制裁解除について、彼は以下のように語っている。

<「今は適切な時期ではない。(北朝鮮が『完全な非核化』をして)適切な時期を迎えれば、大きな支援が行われるだろう。韓国、日本、多くの国々も支援に手を挙げると考えている」トランプ氏は11日午後(日本時間12日未明)、ホワイトハウスで行われた米韓首脳会談の冒頭、こう断言した。報道陣から、南北共同事業である開城(ケソン)工業団地や、金剛山(クムガンサン)観光再開について問われたことに対する回答だった。>(同上)

では、次の米朝首脳会談についてはどうだろう?

<昨年6月と今年2月に続く、正恩氏との3回目の米朝首脳会談についても、トランプ氏は「可能性はあるが、急ぐつもりはない」といい、米国の求めるビッグディールは「核兵器を取り除くことだ」と明言した。>(同上)

どうやらトランプは、北朝鮮を「兵糧攻め」にして、「体制崩壊」にもっていきたいらしい。

中ロが北朝鮮を露骨に支援すれば、「中ロは、国連決議に違反している」と言い、今度は両国に制裁を科すだろう。国連安保理では、中ロが拒否権を使うため、両国への制裁はできない。しかし、クリミア併合後の対ロシア制裁のように、欧米と日本が独自制裁を科すことは可能なのだ。

韓国については、「文にあきれた米国は、米韓同盟を解消する」という声も聞こえる。しかし、地政学的重要性を考えると、米国が韓国を切る可能性は低いだろう。

米国は、「文の後に親米政権を作ること」を目指すだろう。結局、米国にとって最もいいシナリオは、まず韓国を米国の方に引き戻し、親米になった韓国を中心に、朝鮮半島を統一することだ。北の核兵器は、その時に没収する。

そして、統一朝鮮には、当然米軍基地が置かれることになる。中ロは、この悪夢のシナリオを回避するために、北朝鮮を守っているというわけだ。

では、文在寅はこれからどうなるのか?彼は、中国、ロシア、北朝鮮から「使えない男」と冷遇される。また、米国にとって彼は「裏切り者」なので、相手にされなくなる。

この八方ふさがりの状況の中でおそらく文は、日本への態度を変え、和解を目指すだろう。これまでの数々の行状を考えると、袖にしたくなる気持ちは当然だ。しかし、対中国戦略を考えると、日本は韓国をバッサリ切り捨てるべきではない。

文が近づいていきたら、日本は文に「慰安婦問題を二度と蒸し返さない宣言」「徴用工問題解決」などを約束させ、実行させるべきだ。日本は、まったく困っていないので、妥協する必要はどこにもない。

>>おわり。