「日米vs南北朝鮮」という構図が鮮明になった−。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮が、国連安全保障理事会決議に違反する短距離弾道ミサイルを発射したのに、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は融和姿勢を維持しているのだ。こうしたなか、ドナルド・トランプ米大統領は今月末、国賓として訪日する。安倍晋三首相との首脳会談では当然、朝鮮半島情勢も主要議題になる。「北朝鮮の非核化」と「拉致問題解決」を見据えながら、暴挙を繰り返す北朝鮮と協力する韓国に対し、怒りをにじませた共同声明が発表されそうだ。



 《極めて遺憾だ》《日米の間で分析、対応を含めて、あらゆるレベルで緊密に連携していく》《国連安保理決議を完全に履行する》

 菅義偉官房長官は10日午前(日本時間11日未明)、米ワシントンのホワイトハウスでマイク・ペンス副大統領と会談し、北朝鮮のミサイル発射について、こうした点で一致した。

 菅氏はこの後、ニューヨークの国連本部で開かれた拉致問題に関するシンポジウムで講演し、「北朝鮮が正しい道を歩むのであれば、明るい未来を描くことができる。日本は助力を惜しまない」と訴えた。

5月に入り、北朝鮮の挑発が続いている。

 4日には同国東部・虎島(ホド)半島付近からミサイル数発を発射した。約70〜200キロ飛行して日本海に落下した。9日にも、北西部・亀城(クソン)からミサイル2発を発射し、約270と約420キロ飛行させて日本海に撃ち込んだ。日米両国は9日分について「弾道ミサイル」と断定した。

 いずれの発射にも、正恩氏が「火力打撃訓練の視察」として同席していた。正恩氏は9日、「いかなる不意の事態にも主導的に対処できるよう、万端の戦闘動員態勢を整えていかなければならない」と語ったという。北朝鮮の最高指導者が、国連安保理決議違反に関与したといえそうだ。

 この短距離弾道ミサイルで、甚大な損害を受ける恐れのあるのが韓国だが、文政権の姿勢は「従北」のまま変わっていない。最近では、北朝鮮への食糧支援実施に前のめりとなり、プランの検討にまで入っていた。

 北朝鮮の「代理人」という評価が定着しつつある韓国に対し、日米は距離を置き始めている。

 トランプ氏は、北朝鮮が4日にミサイルを発射した後、まず日米電話首脳会談を行い、翌日、米韓電話首脳会談を行った。日米と韓国との距離の開きを如実に示している。

 安倍首相の日米電話首脳会談後の発言も、意味深長だった。

 「北朝鮮への対応は、すべての面でトランプ氏と完全に一致している」と述べたうえで、「朝鮮半島の非核化については首脳会談を通じ、ロシアのプーチン大統領と、中国の習近平国家主席とも認識を共有している」

 そこに、韓国の文大統領の名前はなかった。

こうした状況に、韓国の保守系メディアは危機感を強めている。

 韓国紙、朝鮮日報(日本語版)は8日、社説で「米国が当事国の韓国ではなく日本と最初に電話会談を行ったのは正常な状況ではない」「安倍首相は堂々と『韓国外し』を行っている」と指摘し、こう続けた。

 「文大統領は『韓半島問題の運転席』に座っているはずだが、実際は米国、日本、北朝鮮のいずれも他の車に乗っているような状況が今も続いている」

 北朝鮮が再び、「瀬戸際戦術」に回帰し、韓国が孤立を深めるなか、トランプ氏は今月25〜28日、令和初の国賓として、日本を訪れる。

 トランプ氏は滞在中、天皇、皇后両陛下との会見や宮中晩さん会、安倍首相との日米首脳会談のほか、海上自衛隊最大のヘリコプター搭載型護衛艦「かが」の乗艦視察も検討している。同艦は将来、短距離離陸・垂直着陸が可能な最新鋭ステルス戦闘機「F35B」を搭載する計画である。日米同盟の強固な絆を世界に見せつけることになる。

 国際政治学者の藤井厳喜氏は「日米首脳会談後に発表する共同声明では、北朝鮮に対して『危険な挑発はやめよ』『非核化を決断せよ』『拉致問題を解決せよ』と警告する内容になるだろう。国際社会の制裁が効いてきており、米国は焦っていない。『暴発したら滅びるのは北朝鮮だ』というスタンスで、その場合には制裁を強めるという態度で臨むだろう。韓国については、日米首脳は『文政権は北朝鮮の子分だから仕方ない。外していこう』ということを会談で内々に確認することになるのではないか」と分析している。

https://www.zakzak.co.jp/soc/news/190513/soc1905130003-n1.html
夕方フジ 2019.5.13