大阪市で28、29日に開催される20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)で、日韓首脳会談の見送りが確実となったことに、大阪や関西に在住する韓国人から落胆の声があがっている。

大阪は国内で韓国人が最も多く住む地域だが、韓国の大統領が大阪に複数日滞在するのは約20年ぶりとなる。経済関係の韓国人団体トップは「首脳同士の対話でないと今の状況は打開できない」と会談開催に最後まで期待をかけている。

「大阪は日韓が密接にかかわってきた地域。歴史認識をめぐって両国民には異なる感情があるが、いつまでひきずるのか。両国ともに解決に向け努力してほしい」

韓国人経済人ら約1200人が所属する在日本関西韓国人連合会の金建鍾(キム・ゴンジョン)会長(62)は、困惑した様子でこう語った。会員の経営者からは、日韓の貿易手続きが厳格化しているとの声や、日本の取引先や消費者の“韓国離れ”が起きるのではないかとの懸念が寄せられているという。

日韓関係は、2012年8月、当時の李明博(イ・ミョンバク)大統領が、島根県の竹島に上陸したとき、最悪のレベルに落ち込んだ。60代の韓国人経営者は「韓国物産展や日韓交流の市民行事でさえ中止が相次いだ」と当時の様子を語り、「今は韓国ブームでコリアタウンに大勢の日本人が訪れているが、また急にブームが去るのでは…」と表情をくもらせる。

同年代の別の経営者は「日本に住む同胞が損害を受ける。日韓の政治家は民間を巻き込まないでほしい」と憤りすら語った。

金会長は「韓、米、日は安全保障でも経済的にも切り離せない関係。日韓関係の厳しさは重々承知しているが、日本にはホスト国として全体をみる立場から寛大な姿勢を示してほしい」と、会談開催を願う。

大阪は韓国人、韓国系住民が日本でも最多。昨年6月末の法務省の統計によると、大阪府に住む韓国人は10万1554人で、うち特別永住権を持つ在日韓国人は7万8957人。文在寅(ムン・ジェイン)大統領の訪日が日韓関係改善のきっかけになればと、多くの韓国系住民が願っている。

外国人の人権問題に取り組む「コリアNGOセンター」(大阪市生野区)が15日に開いた講演会で恵泉女学園大(東京都)の李泳采(イ・ヨンチェ)教授は「米韓は北朝鮮情勢で綿密な調整をしている」と述べ、日朝会談を模索する日本政府にとってもG20は「安全保障上、重要な時機だ」として日韓首脳会談の必要性を訴えた。

講演を聞いた大阪市内の在日3世の男性(39)は「日本でずっと働いてきたが、最近は日韓のニュースで同僚から韓国への批判が出て苦しい気持ちになる」と漏らす。男性は「どちらにも正義はあるはずで政府同士で議論してほしい。国も人も多面的な関係があり、交流を断絶するのは間違っている」と危機感をあらわにした。

文大統領は大阪滞在中に在日同胞との晩餐会を予定している。対日関係について何を語るのか、注目されている。


2019.6.27 12:17
https://www.sankeibiz.jp/workstyle/news/190627/ecd1906271217004-n1.htm