台湾で注目すべきデモが決行された。中国寄りの台湾メディアに抗議して、数万人が台北にある総統府前で声を上げたのだ。蔡英文総統はデモへの支持を表明した。「自由」「民主」「法の支配」を死守しようとする香港の大規模デモに続く、共産党独裁の中国を意識した反対運動について、専門家は米国や英国の支持を指摘している。

 「赤色(中国共産党の象徴)メディアを拒否、台湾の民主主義を守ろう」

 台湾の国営通信社、中央社(日本語版)は23日、参加者の訴えをこう紹介した。

 デモは23日、台湾独立派政党である「時代力量」の立法委員(国会議員)、黄国昌氏らが発起人となって行われた。

 英字紙「タイペイタイムズ」によると、同じく発起人である企業家の陳之漢氏は「中国による台湾メディアへの浸透は深刻だ」と述べ、年齢や党派に関係なくメディアによる情報操作に立ち向かい、台湾を守るよう呼びかけた。

 中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案の撤回を求めた香港の学生らの大規模デモを、香港政府は強権制圧しようとしたが、台湾ではまったく逆の動きが出た。

中央社の記事によると、蔡氏は23日、デモの発起人に謝意を示し、台湾メディアへの中国勢力の浸透に対する社会の危機感を高める効果があるとの考えを示したのだ。

 今回のデモの背景について、中国事情に詳しいノンフィクション作家の河添恵子氏は「台湾では長く、国民党がメディアを牛耳ってきた。大手テレビ局の多くは、中国に配慮する番組作りにシフトし、香港のデモもほとんど報じなかった。これに対し、自分たちは台湾人であって中国人ではないと主張する『天然独』といわれる若い世代が現状を変えるために立ち上がった」と説明する。

 米中新冷戦が顕在化するなか、香港と台湾のデモはどう展開しそうか。

 河添氏は「香港のデモは、中国の干渉に怒った英国と米国がバックアップしている。台湾のデモも、米国など自由主義国を味方に付けることができる。その目的は共産党独裁の中国に対峙(たいじ)することだ。今後、大きな動きが起こる可能性がある」と話した。

https://www.zakzak.co.jp/soc/news/190628/for1906280001-n1.html
夕刊フジ 2019.6.28