韓国の感情的な振る舞いは目に余る。日本は事実関係に基づいて粛々と対応すべきだ。

 日本政府は、輸出手続き簡略化の優遇を受けられる対象国から韓国を除外する政令改正を閣議決定した。28日に施行される。

 菅官房長官は記者会見で「韓国の輸出管理制度や運用に不十分な点があることなどを踏まえた見直しだ」と述べた。当局者同士の意思疎通が十分なされず、信頼関係も崩れている。韓国への特別扱いをやめるのは仕方あるまい。

 炭素繊維や工作機械など軍事転用の恐れがある品目について手続きを厳格化し、輸出先や使途を詳細にチェックする。他のアジア諸国向けと同じ扱いに改める。

 日本はすでに、半導体製造に必要なフッ化水素など3品目の輸出手続きを厳しくした。不適切な事案が見つかったためだ。優遇国除外はそれに続く措置になる。

 韓国側は、7月の事務レベルでのやり取りで「撤回を要請した」などと、事実に反する説明をしている。この点も見過ごせない。

 世耕経済産業相は「信頼感を持って対話をできない状態になっている。韓国には発表の訂正をはじめ、誠意ある対応を期待したい」と注文を付けた。当然だろう。

 優遇国からの除外は輸出制限とは違う。輸出企業の事務負担は増えるが、審査をパスすれば、輸出は許可される。こうした安全保障上の措置は、自由貿易を原則とする世界貿易機関(WTO)のルールでも認められている。

 バンコクで日韓の外相会談が開かれ、議論は平行線に終わった。対立を憂慮するポンペオ米国務長官は仲介を模索している。

 問題は、現実を直視しない文在寅政権の姿勢だ。韓国は対日輸出の管理を強める対抗策を発表した。文大統領は閣議で「責任は全面的に日本にある」と述べた。

 日本を非難するだけでは事態は改善しない。韓国が優遇国への再指定を望むのであれば、自国の輸出管理の適正化が先決である。

 韓国側が、北朝鮮の核・ミサイル情報を共有する「日韓軍事情報包括保護協定」(GSOMIA)の破棄の可能性まで示唆しているのは、筋違いと言うほかない。

 韓国はWTOへの提訴も視野に入れている。今後も国際社会で宣伝戦を繰り広げる可能性が高い。日本は自らの正当性を丁寧に発信していく必要がある。

 無論、冷静に協議できる環境が整った場合には、日本も真摯しんしに対応しなければならない。

https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20190802-OYT1T50372/
讀賣新聞 2019年8月3日(土)