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日本政府が韓国に対し、半導体製造に使われるフッ化水素など3品目の輸出管理を厳格化して、4日で1か月となる。これまでに日韓双方の生産活動や企業業績に目立った影響はないが、韓国側は在庫の積み増しや調達先の多様化を進める一方、日本企業も先行きに警戒感を強めている。

 
■高いシェア

 北京を訪問中の世耕経済産業相は3日、記者会見で3品目の輸出管理厳格化について「企業に対しては丁寧に説明している。不安や懸念を持っている企業は、そんなにないのではないか」と語った。

 厳格化の対象となったのは、〈1〉半導体の洗浄に使うフッ化水素〈2〉半導体の基板に塗る感光剤のレジスト〈3〉有機ELパネルに使われるフッ化ポリイミドの3品目だ。いずれも日本企業が世界で高い生産シェア(市場占有率)を持つ。

 一部は外国企業が代わりに生産できる可能性はある。だが、例えば、高純度のフッ化水素の生産は日本企業にほぼ限られるとみられ、高性能な半導体の開発・生産を目指す韓国企業には影響が大きいとみられる。

 
■危機感

 「輸出規制が長引けば、生産に支障が出る可能性は排除できない」

 韓国の半導体大手SKハイニックスの幹部は7月25日、アナリスト向け電話会議で危機感をあらわにした。厳格化の対象となった品目の使用量を節約すると同時に、できる限り多くの在庫を確保し、日本以外の企業にも調達先を広げている。韓国紙・中央日報(電子版)によると、サムスン電子も7月、協力企業に「費用がいくらかかっても、7月末までに90日以上の安全在庫を確保するよう望む」と文書で要請したという。

 楽天証券経済研究所の今中能夫チーフアナリストは「フッ化水素の生産は手間がかかり、輸送も難しい。韓国企業が代替先を見つけるのは厳しいのではないか」と指摘する。

 
■審査に90日

 一方、韓国企業に3品目を販売してきた日本の化学メーカーは、取引継続に向けて経済産業省への輸出許可の手続きを進めている。

 石油化学工業協会の森川宏平会長(昭和電工社長)は7月18日の記者会見で「法令を守って顧客の要件に応えるのが我々の役割だ。手続きが必要なら粛々と進める」と述べた。昭和電工はフッ化水素の製造を手がけるが、「現段階で大きな混乱はない」としている。

 経産省は企業からの申請を受けて審査を続けているが、通常は90日程度かかるため、これまでに輸出が許可された企業はない。手続き中の化学メーカー幹部は「本当に許可してくれるだろうか」と不安を漏らす。

 韓国企業が生産する半導体は、日本企業が作る電子機器にも広く使われている。部品の供給を受けるソニーは年内販売分の部品を確保したが、「影響が軽微との予断は持っていない」(十時裕樹専務)と警戒する。

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20190803-OYT1T50297/
讀賣新聞 2019年8月4日(日)