(ブルームバーグ): トランプ米大統領の関税計画に対し、中国側も貿易戦争を激化させる行動で反撃した。1ドル=7元を超える人民元安を容認するとともに、国有企業に対し米国産の農産物輸入を停止するよう要請した。

こうした展開を受けてトランプ大統領は米時間5日朝ツイッターで、「為替操作」だと非難。「時間とともに中国をひどく弱体化させるだろう」と記した。大統領はかねて米国産農産物の輸入を増やす約束を守っていないことでも中国を批判している。

米中対立の長期化見通しから、5日のアジア市場では株式相場と通貨が下落、安全資産と見なされる円や米国債、金(ゴールド)は値上がりした。投資家は米利下げ幅の見通しも拡大させた。    ラボバンクのアジア金融市場調査責任者マイケル・エブリー氏は「これは最悪のシナリオの1つだ」とし、「まず市場で一斉売りが起こり、トランプ大統領が朝起きれば、事態はさらにずっと悪くなる」と話していた。

中国人民銀行(中央銀行)の易綱総裁はアジア時間5日夕に声明を出し、同国は貿易紛争に対処する手段として為替相場を活用することはしないと表明。「外的要因による最近の変動にもかかわらず、人民元が強い通貨であり続けると確信している」とした上で、外国為替への企業と国民の「合理的かつ合法的な需要」を確実に満たすよう中銀が取り組んでいくと付け加えた。

トランプ大統領は先週、中国からの輸入品のさらに3000億ドル(約31兆8500億円)相当に9月1日から10%の関税を課すと発表。貿易協議再開の直後に突然貿易戦争を激化させた。

中国の公営メディアは論説で、米国による懲罰的関税を保持したり、共産党の権限を弱める可能性のある国有企業などの問題に関し譲歩を迫ったりするいかなる合意も習近平国家主席(党総書記)は拒否すると示唆した。

中国の態度硬化はトランプ大統領が合意の相手方として信頼できず、民主党大統領の誕生を待った方が良いという中国政府の認識の高まりを示すものだ。農産物輸入停止は2020年の大統領選挙を控えたトランプ大統領への打撃となり得る。

5日のアジア株はほぼ全面安となり、MSCIアジア太平洋指数は2.1%安と昨年10月以来の大幅安となった。人民銀が昨年12月以降で初めて1ドル=6.9元より元安水準に人民元の中心レートを設定したことを受け人民元は下落。オンショア元相場は1.4%安の1ドル=7.0391元となった。

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8/5(月) 22:57配信 記事元 ブルームバーグ