社説:ソウル便の運休 静観するよりほかはない

 北陸と韓国を結ぶ定期航空便の運航が休止される。小松−ソウル便を運航する大韓航空は9月29日から11月16日まで運休する。富山−ソウル便のエアソウルは10月末までの運航期間を短縮し、9月16日から休止する。両社は予約が落ち込んでいることを理由に挙げた。

 ソウル便の需要が低迷するのは、日韓関係の悪化によって韓国から日本を訪れる客が減っているためとみられる。

 7月までは、小松、富山両空港とも利用状況は悪くはなかった。小松便は4〜7月の平均搭乗率が70%を超え、富山便は80%台に達していた。それでも両社が運休に踏み切るのは、日韓の関係改善が難しいとみているからだろうか。いずれにしても運休は残念ではあるが、韓国側がそう決めたのであれば致し方がない。

 韓国との関係は、日本政府が韓国向けの輸出品に対する管理を厳格化してから悪化が著しい。とはいえ、日本としては安全保障の観点で韓国を輸出管理の優遇対象から外し、他の国と同様に戻しただけである。元徴用工訴訟の問題でも韓国は日韓請求権協定に反する主張を繰り返している。

 これらの問題に日本が毅然(きぜん)と対応し、正当性を説明するのは当然であるが、文在寅政権の声高な挑発に乗ってはいけない。日韓関係悪化を背景にした韓国側の動きは航空分野以外にも出てくるとみられるが、当面は静観するよりほかはないだろう。

 石川、富山両県では、韓国の自治体や民間との交流事業が中止、延期になる事例が出ている。韓国側には現地の反日感情を気にする声もあるという。交流が歓迎されないのであれば、適切な時期が来るのを静かに待つ方がいい。

 日韓の関係悪化にかかわらず、これまでのように続く交流事業もある。相手側が望むのであれば、安全に注意しながら韓国を訪問するのも一つの考え方である。

 日韓関係が冷え込む今も、日本に入る韓国人は少なくない。石川、富山両県にも韓国からの訪日客はいるだろう。

 反日の声が高まる時に、日本に行くと決めた韓国の人々の思いを拒む必要はない。厳しい時こそ、冷静に対応したい。

北國新聞社 (石川県・富山県)
https://www.hokkoku.co.jp/_syasetu/syasetu.htm