この頃、アメリカでは、"We fought the wrong enemy." (我々は戦う相手を間違えて
いた)という言葉が人口に膾炙していた。日本と戦ったのは誤っていた、という認識である。

日本を大陸から駆逐したものの、アメリカは共産主義勢力に中国大陸を奪われ、さらに
朝鮮では自ら血を流して戦わなければならない羽目に追い込まれた。

今日われわれは、日本人が韓満(朝鮮、満洲)地域で半世紀にわたって直面し背負って
きた問題と責任を自ら背負い込むことになったわけであります。他人が背負っている
時には、われわれが軽蔑していた、この重荷に感じるわれわれの苦痛は、当然の罰であります。

戦後、米国国務省の要職についたジョージ・ケナンはこう主張して、ルーズベルト政権
がとった「ソ連と協力し、日独を叩く」という政策を根本的に批判した。日本が
戦前果たしてきた共産主義の防波堤という役割を、日本を駆逐したために、アメリカが
自ら担わなければならなくなった、という反省である。