>>848
詳細な説明ありがとう

表現の自由に対する法的規制には様々なものがあるが、代表的なのは刑法と民法だろう
刑法は名誉棄損罪、侮辱罪等で表現に対する刑罰を規定しているが、例えば名誉とは
客観的な外部的名誉(社会的評価)を指すとして、主観的な名誉感情などは除外している。
恣意的な処罰を回避するためだ。もちろん事後規制である。
また、刑法上の要件に該当しても、真実性の証明により違法性が阻却されるように、憲法上の表現の
自由との調整が図られている。
民法の不法行為でも社会的評価を毀損することが要件のようで、恣意的な運用がなされない
ようなガードがあると考えられる。基本的には事後規制で、例外的に出版事前差し止め命令
もあり得るが、これには厳格な要件が判例上設定されている。
その他、行政法規では景表法や医療法等による広告規制があるが、これは形式的な基準が
中心だから、恣意的運用の恐れはさほどない。

ヘイトスピーチ解消法の「ヘイト=本邦外出身者に対する不当な差別的言動」の定義を見ると
「本邦外出身者に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、
自由、名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し又は本邦外出身者を著しく侮蔑するなど、
本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から
排除することを煽動する不当な差別的言動」とある。
法律上はかなり限定的のようだし、禁止規定や罰則規定がないから、憲法の表現の自由には
直接抵触しないと思われるし、乱用されても実害はない。

ところが、実際には本法がかなり拡大解釈されている現象が見受けられ、その典型が「韓国
なんかいらない」との週刊ポスト特集に対するヘイト批判である。
同特集は在日韓国人をいらないと言っているわけではなく、国家としての韓国と外国人である
韓国人を批判しているから、ヘイト解消法のヘイトに該当するわけがないのだが、「差別的意識」
や「排除」「扇動」があれば「ヘイト」というように、リベラル系のジャーナリズムが我田引水で
拡大解釈。これを錦の御旗にして「ジャーナリズムにとってヘイトは悪である」と、いわばジャー
ナリズム倫理に転化して、自主規制を強制している節がある。現に産経社説は「ヘイトは表現の
自由の保障の枠外である」とまで言い切っているではないか。
しかし、朝日などは「ヘイト」を倫理に転化・拡大しているくせに、ヘイト解消法がヘイト対象を
「本法外出身者」に限定しているところだけは引用して「日本人へのヘイトはご自由に」との
ご都合主義を決め込む有様である。

あなたの提示した「ヘイト判断基準」は恐らくジャーナリズム等が依拠しているものだと思われるが
「いやな気分になる」とか「民族を貶める」とか「難癖」とかの要件や、「良いほうに成長」とか、
およそ主観的ないしは包括的基準で恣意的すぎるし、「民族を貶める」などは国内居住者に対する
ヘイト行為の法規制が他国に居住する他民族への批判にまで拡張されてしまっている。
これではうかつに日本人と外国人との比較論や、外国人批判さえできなくなってしまうだろう。

ただでさえ法律が憲法上の表現の自由に抵触しないように、禁止・罰則規定なしにしたのに、
表現の自由を徒に吹聴するメディアが喜んでヘイトによる表現規制競争に踏み込んでいるのは
奇異というより異常である。
小生はヘイト規制を、「エセリベラルのエセジャーナリズム倫理である」と考える。