【ソウルから 倭人の眼】

 天皇陛下の「即位礼正殿の儀」に韓国、特に韓国メディアは強い関心を示した。ただ、「世界の平和を常に願い」「憲法にのっとり」と宣明された天皇陛下の印象を好意的に報じつつも、「憲法を改正し日本を戦争が可能な国に変えようとする安倍首相とは対照的」と安倍首相批判の“材料”にしている。皇室のおめでたい儀式よりも、報道のターゲットは今回もやはり「安倍バッシング」だった。

 ■世界で最も注目した韓国

 韓国メディアは今回の取材に大勢の記者を派遣した。即位礼正殿の儀の2日後の24日に行われた李洛淵(イ・ナギョン)首相と安倍晋三首相との会談取材のためだ。

 日本の内閣府によると、約70カ国の約450人が取材登録したそうだが、李洛淵氏が訪日の際に搭乗した「大統領専用機」には何と約50人の韓国メディアの記者が同乗したという。主要メディアは東京に支局があり、現地駐在記者の数も合わせれば相当な人数に上る。日本以外のメディアで最も多くの記者が取材に当たったのは、おそらく韓国であろう。

 即位礼正殿の儀に際し、韓国紙は皇室の家系図を掲載したり、玉座「高御座(たかみくら)」が京都から運ばれたことを紹介したりして、皇室に関するうんちくを傾けた。報道された写真や映像の多くは、天皇陛下のご宣明に続き、祝いの言葉「寿詞(よごと)」を読み上げた安倍首相の万歳三唱の場面だった。

 天皇、皇后両陛下、秋篠宮ご夫妻と長女の眞子さま、次女の佳子さまのご装束姿も韓国ではテレビで報じられた。「大変荘厳な日本の歴史と文化を感じることができた」と李洛淵氏が語ったように、古式ゆかしい皇居での儀式は、韓国で一種珍しいものとして受け止められている。

 ■お言葉の政治利用

 中でも韓国メディアが注目したのは、天皇陛下のお言葉「ご宣明」だ。天皇陛下による「国民の幸せと世界の平和を常に願い、国民に寄り添いながら、憲法にのっとり、日本国及び日本国民統合の象徴としてのつとめを果たすことを誓います」とのお言葉は、そのまま韓国語に翻訳された。特に「憲法」に関する部分を韓国メディアは、天皇陛下による「憲法順守の言明」として評価している。

 ただし、今回も韓国メディアらしい“曲解”付きだ。上皇さまのご在位中の姿にも言及された天皇陛下のお言葉を称賛する一方で、「新しい日王(天皇)のこうした発言は、安倍首相が平和憲法を変え日本を戦争ができる国にするのに力を注いでいるなかで、特に注目される」(ハンギョレ紙23日付の社説)と安倍首相を批判する報道が多い。

 上皇さまの天皇在位当時にもよく見られた韓国での勝手な解釈で、あたかも天皇陛下の考えが安倍首相とは違っていると言いたいのだ。“安倍バッシング”のためなら天皇陛下のお言葉まで、好きなように解釈し、巧妙に韓国式の論理を組み立てる。今回も明らかな天皇陛下の政治利用である。
続く
(ソウル 名村隆寛)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191027-00000507-san-kr
10/27(日) 10:00配信 記事元 産経新聞