台湾総統選で、与党・民進党の蔡英文総統が再選された。最大野党・国民党の韓国瑜・高雄市長らに大差をつけた。

 台湾の有権者は、統一を迫る中国にノーを突きつけ、台湾の独自性を重んじる政権の継続を選択したと言えよう。

 最大の争点となったのは対中関係だ。蔡氏は「民主主義と専制は同一国家では併存できない」と述べ、中国が求める「一国二制度」による統一を拒否する姿勢を鮮明にしてきた。

 一国二制度が適用されている香港で昨年6月以降、中国への抗議活動が激化した。台湾でも、若い世代を中心に、中国と台湾は別だとする「台湾人意識」は高い。

 蔡氏は「台湾を次の香港にしてはならない」と中国批判を強めた。対中警戒感が、蔡氏の追い風となったのは間違いない。

 一方、韓氏は対中融和による経済振興を訴えたが、浸透しなかった。米中貿易摩擦で台湾企業が中国から台湾に生産拠点を戻す動きが進んだこともあり、中国頼みの経済政策は説得力を欠いた。

 だが、台湾経済の長期的な発展には、巨大市場である中国との関係改善が欠かせない。

 中国の統一圧力に抗しながら、中台関係の安定と経済交流の拡大をどう実現するか。蔡政権2期目の最大の課題だろう。

 実際、中国は蔡政権との政治対話を拒否している。軍事や外交で揺さぶりをかけ、貿易や人的交流も縮小した。台湾を中国の一部とする「一つの中国」原則を、蔡政権が受け入れないからだ。

 中国の切り崩しで、台湾と外交関係のある国は15に減った。国際的な孤立は深まっている。

 蔡政権は昨年末、中国の浸透工作を防ぐ「反浸透法」を成立させた。中国が偽ニュースなどで統一に有利な世論形成を図っているとの危機感があろう。

 対中強硬姿勢だけでは、中国と対話もできない現状を打破できまい。法律が政権による反対勢力弾圧に使われかねないとの批判にも蔡氏は耳を傾ける必要がある。

 台湾では1996年以降、7回の総統選が行われ、3度の政権交代があった。中国は台湾の民主的な制度と民意を尊重すべきだ。

 武力を背景にした威圧的な対応は、台湾の人々の反発を強めるだけだ。中国は政治対話を再開し、緊張緩和に動かねばならない。

 台湾の安定と発展は、日本や周辺国にとって極めて重要である。日本は中台双方に対話を促すことが求められる。

https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20200112-OYT1T50028/
讀賣新聞 2020/01/12 05:00

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