「昨年9月と12月に対馬を訪問した際は島から韓国人旅行客が消えており、常駐しているはずの観光バスも見当たりませんでした。そんな対馬を見るのは初めてでした」──そう語るのは、『爆買いされる日本の領土』の著者で、産経新聞編集委員の宮本雅史氏。

 2019年に日本を訪れた韓国人旅行客は、前年比26%減の558万人だった。昨夏以降、韓国を席巻した「NO JAPAN」運動により、日本旅行を取り止めるケースが続出したためだ。

 その影響が直撃したのが、日本と韓国の国境に位置する離島・対馬(長崎県対馬市)だ。2018年に約41万人に達した対馬への韓国人旅行客は、日本製品の不買運動がスタートした昨年7月以降激減し、9月には前年同月比9割減となった。

 2008年から対馬を何度も訪れて、島の移り変わりを定点観測している宮本氏にとっても、今回の異変は予想を上回るものだった。

 その一方、 宮本氏が「いまも気がかりです」と語るのが、韓国資本による不動産買収だ。

「これまでも対馬は韓国資本による民宿や民家の買収が盛んでしたが、いまも水面下で買収が進んでいます。昨年の訪問時に現地の住民は、『この1年間でますます不動産買収が進んだ。10軒以上の民宿が買収された地域もあるし、20軒以上の民家に韓国人が住んでいる地域もある』と語りました。

 なかでも驚いたのは、島の中心地・厳原町に『民団長崎県対馬支部』という看板を掲げた建物が出現したことです。在日韓国人でつくる在日本大韓民国民団の長崎県地方本部対馬支部のことで、2018年10月に設立されたとのことです」(宮本氏)

 厳原町から福岡までは約138kmだが、島の北部の比田勝港から韓国の釜山までは最短距離で約50kmしかない。このため釜山と厳原を結ぶ国際航路が就航した1999年以降、韓国人旅行客は右肩上がりで増加した。

時を同じくして韓国資本の進出が加速し、ホテルや民宿、釣り宿が次々と買収された。いまや厳原の歓楽地・川端通りや、比田勝港の国際ターミナル前には、韓国語の看板がズラリと並ぶ。

「好立地にあるホテルや飲食店は韓国資本が増えており、『川端通りはアリラン通りだ』と語る飲食店経営者もいます。そんな状況下、韓国人旅行客が激減して大きな打撃を被るのは韓国資本ですが、島の活気が失われたことも確か。『この機会に、国は国境離島の経済をどう活性化させるか考えてほしい』と多くの島民が訴えています」(宮本氏)

《中略》

 国土防衛の要となる島に外国資本の“上陸”が続く状況に宮本氏は警戒心を強める。「軍の要衝でもあった対馬の状況は日本の安全保障に直結します。

この重要な島から日本人がいなくなり、韓国資本が不動産買収を進めている現状にもっと危機感を持つべきです。島内には海峡を行き来する艦船や自衛隊を監視できる地域が点在しますが、すでにそのいくつかが韓国資本に買われたとの情報もある。日本人は、日韓関係の悪化で韓国人旅行客が減ることばかりに目を奪われず、水面下で起きていることを直視する必要があります」(宮本氏)

 韓国資本の動向に注意を促すことは、ヘイトスピーチのような排他的な思想を意味しない。むしろ問題は日本人の「領土意識」であると宮本氏は強調する。

「韓国資本がルールに基づいて対馬の不動産を買収することを“韓国はけしからん”と非難する気はありません。本質的な問題は、日本人の領土に対する意識が低いことです。外国資本の土地買収を法律で制限していないのは、アジアでは日本だけです。『領土・主権・国民』のひとつでも欠けたら、国民国家は成り立ちません。日本でも早々に、外国資本による不動産買収を制限する法律をつくるべきです」(宮本氏)

●取材・文/池田道大(フリーライター)NEWSポストセブン
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2020年01月26日 07:00