文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、今年の新年の辞で「南北は共に生きる『生命共同体』だ」と主張し、金剛山(クムガンサン)観光および、開城(ケソン)工業団地再稼働を促進する演説を行った。

 米国の反対を押し切って、「対北朝鮮制裁解除」に踏み込む決意を表明したのだ。それは、「在韓米軍撤退」、さらに韓国の「レッドチーム(北朝鮮、中国、ロシア)入り」を視野に入れたものに違いない。

 今、韓国の自由・民主主義は音を立てて崩れようとしている。昨年12月末、韓国国会は「高位公職者犯罪捜査庁(高捜庁)」の設置を議決した。高捜庁とは政府高官、判事、検事などの不正を捜査する独立機関であり、事実上、大統領直属の秘密警察である。

 これからは、裁判官も検事も大統領の顔色をうかがいながら公務を遂行することになる。「三権分立の終焉(しゅうえん)」である。

 1月8日には、秋美愛(チュ・ミエ)法相が、最高検察庁幹部32人を左遷した。文大統領側近の「選挙妨害」などの疑惑を捜査していた検事はすべて排斥された。同月13日には「検察改革法」が国会で可決され、政府に敵対する検察の力は大幅に制限されることになった。

 なぜ、ここまで文政権は暴走するのか。

 それが今年4月15日に行われる総選挙に勝ち、「南北赤化統一」への道を開くためだと考えれば納得がゆく。

 文氏は任期の前半で、韓国の権力構造を左翼化させることに、ほぼ成功した。行政府の局長以上のポストは、すでに左翼民族主義の闘士が握った。マスコミも地上波テレビの上層部は、すべて文支持派が抑えた。労働界は100万人を擁する親北左翼の全国民主労働組合総連盟が牛耳っている。

 文氏自身、韓国内で共産革命を策動して検挙投獄された北朝鮮工作員、申栄福(シン・ヨンボク)を「最も尊敬する人物」と公言しており、根っからの「親北主体思想派」とみて間違いない。財閥がのさばる韓国型資本主義を打倒し、念願の民族統一を達成したいと考えているはずだ。

 彼にとって、今回の総選挙は自分が目指す「赤化統一」への最大の関門となる。ここで圧勝すれば彼の権威は不動のものとなり、独裁体制が完成する。その強力な指導力によって社会主義へと国の形を変え、さらに北朝鮮体制の下で南北統一を果たすつもりだろう。

 そのために「秘密警察」を組織し、法律まで作って保守派を葬ろうとしているのだ。

 もちろん、韓国の保守勢力も黙ってはいない。

 愛国心に燃えた学者たちは『反日種族主義』(文藝春秋)という本を著して、左傾化した体制と命がけで戦っている。

 もし韓国が赤化すれば日本の安全が脅かされる。日本の国会も「桜を見る会」などにこだわっている場合ではない。真剣に自国の防衛を考えねば日本の将来が危ないのだ。

 ■松木國俊(まつき・くにとし) 朝鮮近現代史研究所所長。1950年、熊本県生まれ

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2/15(土) 16:56配信