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 アメリカの感染者はまだ15人である。それなのに、大々的な感染防止の処置を取ろうとしている。保健福祉省およびCDCは、中国以外のアジア諸国、日本、シンガポール、香港などとの人的交流を規制することを提言しているという。

 私はこれまで、今回の「武漢肺炎」(中国ではそう呼んでいる:新型コロナウイルス=COVIT19)の騒動はいずれ終息する。インフルエンザと同じようようにやがて一般化して、それなりの対応策で落ち着くだろうと考えてきた。心配なのは騒動を大きくすることで、ウイルスそのものに対しては心配してこなかった。それは、健常者なら感染したとしても発症しないか、発症したとして軽くてすみ、死には直結しないと思ってきたからだ。これまでの報道では、致死率は2%ほどで、WHOのチーフサイエンティスト、スーミャ・スワミナサン氏は「検査を受けた患者の数が増えるにつれ、死亡率は日ごとに低下している」(ブルームバーグの報道、2月12日)と言っていたからだ。

 さらに、中国の取り組みが、武漢市を全面閉鎖するなど、これまでのSARSなどのときと違って全面撲滅に動いている。報道規制やごまかしを繰り返してきた中国政府も、今回ばかりはそれを認め、これまで発表してきた感染者数の統計数字には未発症者が含まれていないと発表した。また、上海市当局も300人の発症と1人の死亡を隠していたことも認めた。

 武漢市の幹部も更迭され、新型コロナウイルスの発生源として疑われている武漢ウイルス研究所には、中国人民解放軍の少将であり、トップクラスの科学者が送り込まれた。この少将は女性であり、陳薇(チェン・ウェイ)という。

 彼女は、SARS とエボラ出血熱のエキスパート。SARSとの戦いでもっとも貢献した学者で、生物化学兵器部門の最高責任者である。

 ここまで、中国がやっているのだから、インフルエンザ同様、暖かくなれば終息すると考えるのが自然だろう。

 しかし、こうした中国政府の対応を裏返しに考えると、武漢肺炎の発生源は海鮮市場ではなく、武漢ウイルス研究所であり、新型コロナウイルスは人工的なものというのが真実かもしれない。

 武漢ウイルス研究所の石正麗研究員は、いま、SNSで血祭りに上がっている。それは、彼が昨年、「コウモリからコロナウイルスを抽出し新種のコロナウイルスを研究する」という講演会を行ったことがわかり、SNS上で開発者として名指しされたことに怒りのツイートをしたからだ。

 これに対して、現役研究員の1人が、目撃情報も暴露したので、人工ウイルス説の信憑性が高まっている。

 アメリカ政府は、こうしたことを知っていて、早くから、対応を厳しくしたのではないだろうか。アメリカ国務省は1月31日には、自国民の中国への渡航を禁止した。また、大統領令により、アメリカ入国前14日以内に中国(香港とマカオの特別自治区を除く)に滞在歴のある人間の入国を禁止した。これを受けて、アメリカの大手航空会社は、中国便の運行を全面停止した。

 新型コロナウイルス の感染力は、想像以上に高い。未発症者からも感染する。

 ここからは私事だが、現在、私の娘はニューヨーク在住である。今回の武漢肺炎の騒ぎが起こる前から、家内は娘を心配して、何度もラインやメールをしている。それは、アメリカでは史上最悪のインフルのアウトブレークが起こっていて、すでに1万人以上の死者が出ているからだ。とくに、ニューヨークは感染拡大がひどい。

 これに、武漢肺炎が加わったのだから、在米日本人の不安は募るばかりとなっている。

 そして、いま、武漢肺炎は新たな局面に入り、このまま日本の感染者が全国的に増え続ければ、アメリカ政府は中国同様、自国民の日本渡航を禁止するだろう。また、日本からの渡航者も入国拒否しかねない。例えば、過去2週間以内に東京に滞在歴があれば、入国禁止の措置がとられる可能性もある。

 そうなれば、アメリカの航空会社も他国の航空会社も日本便の運行を停止するだろう。現在、ユナイテッド、デルタ、アメリカンは中国に飛んでいない。欧州のルフトハンザ、ブリテッシュ・エアウエイズなども中国便を欠航している。

 となると、娘を含め在米日本人は日本に帰ってこられない。また、ほかの方法で帰ってこられたとしても、アメリカに再度入国できなくなる。この3月初旬、娘は仕事で日本への一時帰国を予定している。また、私も4月に取材でアメリカ行きを予定している。いったいどうなるか、いまは、固唾を飲んで事態を見守るほかない。


山田順
作家、ジャーナリスト、出版プロデューサーhttps://news.yahoo.co.jp/byline/yamadajun/20200216-00163266/