武漢コロナ事態が急展開している。韓国国内で最初の感染者が確認されてから1カ月で初の死者が出て、感染者数は100人を上回った。最近1カ月は1日1人ずつ増えていた新規の感染者は、この2日間で70人以上発生した。中国では先月18日に62人だった患者が2日間で2倍に増え、2週間もしない間に1万人を超えた。韓国が「まさか」と言っていられる状況ではない。予想もできなかった変数が続出している。31番目の患者の場合、教会の礼拝に参加した1000人のうち90人からすでに症状が確認されている。この90人がまた別の場所でウイルスをまき散らしていれば、感染者は幾何級数的に増加するだろう。最初の死亡者が発生した慶尚北道清道の精神病院では、集団感染の懸念から100人以上の患者とスタッフが隔離されている。この病院では今後いかなる事態が起こるか誰にも分からない。

 コロナ患者を治療する医療スタッフや専門家で構成された中央臨床委員会は昨日、「学術的推定」と前置きした上で「武漢コロナによって国民の40%が感染し、2万人が死亡する恐れがある」と発表した。2009年に70万人が感染し、230人以上が死亡した新型インフルエンザ以上に深刻な事態になりかねないという意味だ。新型インフルエンザのときはそれでも治療薬があったため、国民の不安は軽減された。武漢コロナは治療薬もワクチンもない。最悪のケースを想定したものだが、ただ聞き流せるような推定とは言えない。

 今の事態を招いた責任者はまさに政府だ。大韓医師協会など専門家団体が何度も中国からの感染源流入遮断を勧告し、70万人以上の国民が青瓦台に請願を行ったが、毎日数千人から2万人に上る中国人の入国を放置した。揚げ句の果てには防疫の実務責任者の口から「防疫のそぶり」をしたという発言も出た。鄭銀敬(チョン・ウンギョン)疾病管理本部長は19日「防疫という立場からは、高リスク群が減る(中国人訪問客の)入国禁止は当然望ましい。しかし他の部分を考慮し、政府次元で立場を整理した」と発言した。大門を全開にして、家の中で蚊を捕まえるそぶりをしたというわけだ。その「他の部分」が何かは誰も説明していない。おそらく総選挙の際に何か「中国ショー」をしたい考えがあったと推測するだけだ。

武漢コロナは密閉された空間では空気感染も可能だという。過去のSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)よりも危険な要素がより大きいのだ。ところが政府の対応を見ると、本当に非常事態なのかと疑われるほどだ。丁世均(チョン・セギュン)首相は20日に招集した国政懸案点検調整会議の冒頭発言で、武漢コロナに一切言及しなかった。この日は一晩で30人以上の感染が確認され、パンデミック(感染病大流行)を懸念する声まで出始めた日だ。同日午後には再び数十人の感染が追加で確認され、ようやく緊急関係長官会議が招集された。何をしているのか分からないし、理解もできない。

 政府が根本対策を結局放棄するのであれば、国民自らが自分の安全を守るしかない。インフルエンザとよく似た症状が出たからと言って病院や保健所で受診すると、本当の感染者と接触するリスクが高まる。1日か2日は自宅で様子を見た後、指定診療所で受診しなければならない。当分は人が多く集まる場所を避け、マスクを着用し、徹底した手洗いを生活に取り入れるしかない。

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朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 2020/02/21 14:40