韓国映画『パラサイト/半地下の家族』がアジア映画として史上初のアカデミー賞4部門を受賞し、韓国の存在が一躍、世界に轟いた。
同映画は韓国社会の深刻な貧困問題を描き、観る者に衝撃を与えたが、そこでも描き切れないほどに実際の韓国社会には闇が溢れている。
その惨状は一部で「ヘル朝鮮」と揶揄されるほどだ。

その根底にあるのがやはり「深刻な格差」と語るのは、韓国の社会情勢に詳しいジャーナリストの徐台教氏。

韓国では’70〜80年代にピークを迎えた高度経済成長が’97年に破綻。出生率はゼロ台に突入し、
若者の未曽有の就職難に加え、階層の固定化が著しい。

’17年はOECD加盟国中、アメリカに次いで所得上位と下位10%の賃金格差が大きかった。
また、大企業が0.1%、中小企業が99%以上でその中間はなく、双方の生涯賃金には大きな乖離がある。

「韓国では、上位30大学の卒業生であれば一応、大企業に就職することが可能です。
しかしそれ以外の大学卒や高卒だと難しく、安定した生活が得にくくなってしまう。

特権階級の力を乱用し尽くした朴槿恵前大統領が弾劾されてうやむやになっているが、階級はそのまま残っているわけです。
人間の立ち位置がカテゴライズされやすい韓国社会は本当に恐ろしいと常々感じます」

階層固定化の源流と言われているのが「386世代」である。

「’90年代に30代、’80年代に民主化運動に関わった’60年代生まれの者」を意味するが、この世代で大卒者が激増し、
学歴による収入の格差が生じた。それがそのまま階層として子供に受け継がれ、富の偏在が生じているといえる。

昨年゙国法務部長官(当時)が自らのコネで子供に不正入学をさせた事件もその象徴で、
内申書の加点は親が金持ちであるほど有利になる実態が根強くあると言われている。

先進国の中でも、深刻な格差問題を抱える韓国だが、今のところ打開策は見えない。

「格差を含めた社会の葛藤を鎮静化させる『包容型福祉国家』というのが、今の韓国が目指す理想像。
具体的には、セーフティネットの拡充と機会の平等化、差別のない社会の実現です。そんな文政権が真っ先に掲げたスローガンが『所得主導成長』です」

具体的な実現例としては、日本でも話題になった最低賃金の引き上げだったが、
結果としては雇用側の負担が増加し、逆に雇用が減る現象が起きてしまった。

さらに税制では昨年、高所得者や不動産所有者からはより多く税金を徴収する法改正も行われたが、一部の富裕層から大きな反発が起きた。

「方向性は悪くなかったが、自営業者が労働人口の25%を占める韓国では政府の一律的な政策はさほど効果的ではなかった。
さらに国会が富裕層派の保守派と公正な富の分配を求める進歩派で拮抗しているため、さまざまな規制緩和に関する法案は通らず、
給料を上げただけで終わってしまったような面もある。それ以降、文政権はもう所得主導という言葉を口にしなくなりました」
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200322-00215192-hbolz-int