【北京時事】今年1〜3月期の中国経済成長率は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動の停滞が響き、マイナス6.8%に落ち込んだ。突然の景気失速は、経済成長を最重視してきた習近平指導部にとって、求心力低下につながりかねない非常事態だ。
 政府は今年を「小康社会(ややゆとりのある社会)」実現の年に位置付け、国内総生産(GDP)を2010年比で2倍にする目標を掲げる。達成に必要な今年の成長率は5.6%程度とみられている。
 しかし、達成は困難になりつつある。4〜6月期は落ち込みの反動で急回復が期待されていたものの、深刻な消費不振や世界的な感染拡大に伴う外需低迷のため、2四半期連続でマイナス成長に陥るとの見方が強まってきた。通年でも急減速は避けられず、世界銀行は今年の成長率を2.3%、国際通貨基金(IMF)は1.2%と予想。民主化運動を弾圧した天安門事件の翌年の1990年(3.9%)を下回る水準で、世銀によると76年(マイナス1.6%)以来44年ぶりの低成長にとどまる可能性が高い。
 共産党政権は経済的な豊かさの実現を最優先課題としており、経済成長で国民の支持をつなぎ留めてきた。GDPの倍増目標が未達に終われば、習指導部への信頼が揺らぐこともあり得る。
 予防線とみられる動きも出ている。今年の成長率目標は今後開かれる全国人民代表大会(国会)で公表されるが、「6%前後」で内定していたとされる数値を引き下げるとの観測に加え、目標設定を見送るべきだとの声も上がっている。
 中国紙によると、政府内では「雇用が確保できさえすれば、成長率の高低はそれほど重要ではない」との認識も浮上。目標を設定したとしても、達成にはこだわらない姿勢を示したと受け止められている。
 国家統計局の毛盛勇報道官は17日の記者会見で、倍増目標に関する質問への回答を避ける一方、「わが国は既に小康社会の目標を基本的に実現した。残る課題は脱貧困だ」と強調した。倍増目標に代わり、貧困脱却を国民にアピールしたいとの思惑もうかがえる。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020041700909&;g=int
時事ドットコム 2020年04月17日20時33分